私の彼は、SP
「え・・・・・SPの方を今日から付ける?」
「あぁ。何があるか分からないこのご時世。大事な大事なお前に、万が一の事があったら大変だからな。」
今や、様々な事件が起こるこの時代。
彼女の父親は、娘にSPを付ける事を決意した。
本当ならば、嫌だった。
だが、そうしなければ、娘は護れないかもしれない。
だがしかし・・・・・だがしかし、と悩みに悩んで、漸く決めたのだ。
初めは、女にしようと決めて捜していた。
そうすれば、大事な娘を盗られなくてすむから。
しかし、なかなか気に入った人物が出てこない。
困り果てた父親の前に、突如、現れた人物。
この人しかいない!そう直感し、父親は、必死にSPになってくれるように頼み込んだ。
しかし、事はそんな簡単には進まない。
そんなに、上手く行くならば、人生苦労なんて必要ないのである。
そうだ。誰だって、苦労はしないのだ。
なかなか、首を縦に振ってくれないその人物に、父親は困ってしまった。
悩んだ末、彼は娘の写真を見せてみた。
すると、写真を見つめたまま、彼はこう言ったのだ。
「ふぅん・・・・・貴方に似ず、可愛い子だね。良いよ。やってあげる。だけど、僕の条件をのまないなら、この仕事は拒否するし、貴方を咬み殺すよ。」
何と、恐ろしい・・・・・。
断るだけじゃなく、自分を咬み殺すというのか!?
その彼が、出した条件。それは・・・・・・・・・・。
突然、彼女の父親は、一枚の写真を取り出した。
その写真には、彼女が知らない少年が写っていた。
その少年は、面白くなさそうな表情をしている。
写真が、嫌だったのだろうか?
全くと言って良いほど、笑っていないのだ。
優しいのか、怖いのか。そう聞かれたら、“怖い”を選んでしまいそうな第一印象。
でも、黒く美しい髪が、鋭い瞳が、とても印象的な人だった。
「お父様、この写真の方は?」
「その人が、お前のSPだ。名前を、雲雀恭弥と言う。」
「雲雀・・・・恭弥さん・・・。」
綺麗な名前。
この人に、似合っている様な気がする。
“雲雀恭弥さん。”と、何度も心の中で、写真に写る彼の名前を呼んでみた。
写真の中にいる彼は、一体どんな人なのだろうか。
自分が、想像している人なのか。
又は、想像とは全く違う人なのか。
どうなのだろう・・・・・と想像は、膨らみ続けていた。
「と、言う訳だ。今日から、並盛中学校に行ってもらう事になった。」
「え!?」
それは、余りに急すぎる。
しかし、文句は言えない。
文句を、言おうとも思わなかった。
自分は、行くしかないのだ。
そこに、写真の彼がいるのだから。
自分を、護ってくれる人が、いるのだから。
私が、赴くのが当然。
例え、行った事がない場所だとしても・・・・・・。
「此処が・・・・並盛中学校・・・・。」
見た所、普通の学校。
けれど、問題が一つあるのよね・・・・・。
問題も、問題。大問題。
雲雀恭弥の居場所が分からない。
父親も、彼がどの場所に居るのかを教えてもらっていないと言う。
この広い校舎を、一人グルグルさ迷うつもりは更々ない。
あの人に聞いてみようかしら。
解らないのだから、聞いて解決するのが一番よね・・・・・。
「す、済みません。ご迷惑かと思いますが・・・・・この方は、一体何処にいらっしゃるのでしょうか?教えて下さい。」
「(えぇー・・・何で俺が・・・)・・・・・・・って・・・・ひ・・・ひひひひひひひ雲雀さん!?」
「雲雀さんをご存知なのですか?」
「ご存知も何も・・・・君・・・・この「何、人の名前をどもらせてるの?咬み殺してあげようか?」
「ヒィィィィ!!!!!何時の間に後ろに居たんですか!!!!じゃない!も、申し訳ありません!!!御免なさい!!!!!」
何を、怖がっているのだろう。
そんなに、雲雀さんという方は、怖い人なのかしら。
もしかして、私の想像は、真実へと変わってしまうの?
ふと、私の前に誰かがやってきた。
誰なのだろう?と不思議に思った私は、視線を向けてみる。
その視線の先には、一人の男子生徒が立っていた。
この中学校の学生服を身に纏い、学ランを肩に掛け、風に靡かせている。
その学ランの腕には、“風紀委員”と書かれている腕章。
見覚えがあった。
その、姿に。
その顔に。
間違いない。そう確信した。
彼が、“雲雀恭弥”だ。
写真で見た、あの人だ。
「ねぇ、何時まで僕の恋人の近くに居るわけ?」
「は?恋・・・・?え?はぃ?!」
「え・・・・・・お二人はこいび「違うから。僕に、そんな趣味無いから。勘違いしないでよ。恋人は、君だよ君。名前なんだっけ?確か・・・・・だよね?」
自分に向かって、伸びてきた腕。
突然、抱き上げられてしまった。
突然すぎて、思考が危うく停止してしまいそうになった。
状況を飲み込めてない私に対し、彼・・・・・・雲雀恭弥はこう言った。
「宜しく。お嬢さん?あ、違うね。正式には僕の未来の奥さん?あ、でも恋人の方がいい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
何が、奥さん?
何が、恋人?
何がというよりも、どなたが?
この人、頭が可笑しいのだろうか。
顔はとても良いのに、何処かずれているんじゃないのだろうか・・・・・・と思ってしまった。
何時の間に、私は彼の未来の奥さんになったのだろう。
お父様からは、何も教えていただいて無い。
きっと、何かの間違い。
私が、聞き間違えただけかもしれない。
そんな事を考えながらも、私は彼に手を引かれ歩き出す。
何処へ向かっているのか、尋ねても“付いてくれば解るよ”の一点張り。
そうなってしまえば、私はそれ以上追及することは出来ない。
ただ、黙って付いていくしかなかった。
「今日から、君は僕のお嬢様で恋人で未来の奥さんだから。」
「は・・・・は・・・ぁ・・・・・。そうですか。」
「ワオ。余り驚かないね。嫌だって騒がないんだね。君嫌じゃないの?僕の事、まだ何も知らないのに。
あぁ、勘違いしないでね?嫌だって言ったら、恋人は諦めるとか、奥さんにしないとか、そんなんじゃなくて、唯単に、君の意見を聞いてあげているだけだから。」
「はぁ・・・・・特に嫌だという感情は持ち合わせていませんので。」
「ふぅん。君、不思議な子だね。」
「貴方も、不思議な方ですね。」
そう、不思議な人だ。
これから、一体この人とどうなっていくのだろう。
それは、考えてみたけれど、どうしても浮かんではこなかった。
きっと、楽しみに待っていなさいという事なのね。
「あぁ、。君は、今日から此処の生徒だから。」
「え!?わ、私・・・・まだ小学校六年生ですよ?」
「大丈夫。僕なんて、何時でも好きな学年に居るんだから。」
「・・・・・・・・・面白い人。」
どうぞ、宜しくお願いしますね。
私のSPであり、恋人であり、未来のだんな様でもある雲雀恭弥さん。
此処に、当の雲雀本人の、胸のうちを書いておこう。
どうして、こんなに可愛いんだろう。
本当に、昨日逢ったあの男の子供なの?僕は、信じられないね。
まぁ、絶対に母親譲りの容姿で性格で、周りの人間を夢中にさせたんだろうけど。
でも、でもね・・・・・今度からはそうは行かないよ。
彼女は、僕のモノ。誰にも渡さないし、見せるとしても、最小限に食い止めないと。
そう、要注意人物は、他の学校にいる。ソイツは、気を付けなければいけないbPだ。
まさか、この僕が写真を見ただけで惚れるなんてね。
いや、その前に、僕にも恋心があったのが不思議でならないよ。
ワオ、今だって心臓がバクバクいってる。
大丈夫かな。
顔、にやけてないよね?
恥ずかしい格好なんて、絶対に見せられない。
には、格好良い僕だけを見ていて欲しいから。
うん、僕は君を夢中にさせてみるよ。
君は、僕に夢中になる。
それは、もう決まっているんだ。
だって、僕がそう決めたんだから。
・・・・・・・・・・・・・と、いう感じである。