気付いていたけれど、行きたくないし、言いたくない。
遅れてしまった、“I LOVE YOU”
「今日の予定は・・・・特にないわね。」
手帳を見て、本日の予定を見る。
別に、人殺しをする予定もないし、知り合いに会う予定もない。
況してや、恋人なんかに会いたくもない。
否、そもそも・・・・恋人だなんて、私は認めたくもない。
“今日から、恋人だから”なんて勝手に宣言して・・・・あぁ、思い出しただけでも、腹立たしい。
いっそのこと、何処がどの部位だか分からなくなる位切り刻んでやろうかしら。
雲雀恭弥の、存在そのものが嫌だわ。
(あんな奴・・・・・あぁ・・・本当に苛々してくるわね。どうするか・・・・人でも殺すか?否、自分の意思に反する・・・。)
殺すのは、一ヶ月に一度。
その時まで、愛刀は使わずに休ませておく。
その意思に反することはしたくない。
でも、この腹立たしい気分をどうしたら良いものか・・・・・。
取り敢えず、愛刀の雲雀(奴に勝手に付けられて、変えたら襲うと言われた)を持って、私は外に出る事にした。
「・・・・・・・・・。」
が、来ない。
昨日は、僕の誕生日だったというのに、は来なかった。
何か大変な事があったのかと心配になったから、彼女の携帯に電話をしたら、電源が切れていて分からなかった。
一週間前から、僕の誕生日を教え続けていたのに、忘れていたのかな。
・・・・・・・一日に、数十回も言ったのに忘れるなんて、そんなに僕に興味がないのだろうか。
僕は、の事を沢山沢山知りたいと思うのに、彼女の考えは正反対だ。
僕は、会いたい。
僕は、君に会いたいんだよ・・・・・。
どうして、僕の願いを分かってくれないんだろう。
僕の気持ちを、理解しようとしてくれないんだろう。
やっぱり、あの刀に僕の名前を付けたのが良くなかったのかな。
それとも、人を殺しても良いけど、殺すなら僕の恋人になりなよって言ったのが悪かったのかな。
僕は、君に何か悪い事をしたのだろうか。
僕よりも、の方が悪いと思うんだけど。
僕に好きって言わないし。
愛してるとも言ってくれないし。
大体、携帯の電源くらい入れておくのが普通なんじゃないの?
電源切ってあるなら、無理矢理持たせた意味がないじゃないか。
こんな冷めた関係が、恋人と言えるの?
否、言える筈がない。
今日こそ、好きって言わせたいよ。
・・・・・・言わせたいけど、何処にいるんだろう。
僕は、立ち上がり捜してみる事にした。
「・・・・・・何で居るのよ。」
かなり嫌そうな感情を、隠すことなく声に出した人物の方へ顔を向ける。
思った通り、そこに居たのはだった。
「ねぇ・・・・・僕が電話したのに、どうして電源切ってるのさ。」
「電源?あぁ・・・・・だって、自分が電話しないのに、電源入れていても仕方ないじゃない。」
「相手から掛かってきたら、出られないじゃないか。今度からは、電源入れておきなよね。」
「・・・・・貴方に命令されるのは、本当にムカつくわね。殺したくなるわ。」
「殺したい?馬鹿なこと言わないでよ。君に、僕は殺せないよ。だから、昔負けたんでしょ?今だって、結果は変わらないよ。」
そう、今も昔も変わることがない事実。
君は、僕に勝つことは出来やしない。
どんなに頑張ったって、勝てないんだよ。
そう言ったら、は、唇を噛み締め、怒りが込み上げてきたのか身体を震わせていた。
「・・・・どうしたら、別れてくれるのかしら。」
突然、が僕に向かって微笑んだ。
そんな笑顔とは正反対に、言葉には棘があり、絶対に怒っている事が僕には、分かった。
今のは、禁句だったのかな・・・・は、“負け”という二文字が嫌いだからな・・・・・。
「ねぇ、別れてほしいのよ。最も、こんな状態で付き合っているかどうかも怪しいけれど。」
「付き合っているに・・・・決まっているじゃないか。」
「そうかしら。私としては、早く貴方が別れたくなる事を願うわ。」
何を言っているのさ。
付き合っている。
僕達は、間違いなく恋人同士だよ。
例え僕が、無理矢理付き合わせているとしても、君は、拒む事をしないじゃないか。
後ろから抱き締めれば、悪態吐きながらも、大人しくしているし、キスをする時だって、顔を真っ赤にして嫌そうな顔をしながらも、結局は受け入れてくれる。
僕が、どうしても側に居て欲しいと心の中で思っていたら、君は、黙って隣に座っていてくれるじゃないか・・・・・。
確かに、冷めているよ。
でも、温かい時だってあるって、今気付いた。
きっと、沢山の冷たさに埋もれてしまっていたんだ。
ねぇ、もしも君に温かさがあるなら、僕に言ってほしいよ。
どうでも良い物なんか要らない。
何時かは、消えてしまう物も要らない。
僕が欲しいのは、一つだけだよ。
君は、既に気付いている筈だ。
だから、言って欲しい。
「君の口から、聞きたいね。」
「・・・・・・・・何を聞きたいのかしら?」
「言わなきゃ分からないの?。君なら、言わなくたって、既に気付いているんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・。」
は、完全に口を閉じて、黙ってしまった。
こんな態度を取るときは、大抵分かっているから言わないって事だ。
やっぱり、分かっているんじゃないか。
分かっているなら、どうして言ってくれないの?
素直になってしまえば、楽になれるんだよ・・・・・。
「ねぇ、言ってよ。僕に聞かせてよ。」
僕は、ゆっくりとに近付く。
は、逃げる事すらせずに同じ場所に立ち、まるで僕がその場所に来るのを、待ち望んでいるみたいだ。
にに近付き、“逃げないんだね”と、頬を撫でながら優しく囁いたら、“逃げるのは、嫌いなのよ”と、君は強気な発言をした。
照れ隠しだと分かっている僕は、愛しさが溢れ出して、君を強く抱き締めた。
“苦しい”と言われてしまったけど、そんなの僕は気にしない。
そんな反抗的な態度、もう辞めなよ。
さぁ・・・・・・僕の欲しい言葉を言って。
「僕の事、好きなんでしょう?」
「・・・・・・・・・嫌いに決まっているじゃない。」
“でも”
「愛してもいるわね。」
何て、矛盾しているんだろう。
でも、今“愛してる”って言ったよね。
この僕を、愛してるって確かに言ったよね?
「じゃあ、もう我慢しなくて良いんだよね。」
「・・・・・・・・・は?」
「僕は、もう我慢しないよ?君への気持ちを抑えるなんて、面倒な事をしないからね。」
「は?ちょっ・・・・・まっ・・・・・待ちなさい!」
“まだ言っていない言葉があるでしょう!”とは、僕を引き剥がす。
・・・・・・・・キスしたかったのに、どうして止めるのさ。
こんな幸せな気分なのに、キスをしなくてどうするのさ。
納得のいかない僕に向かって、半ば呆れ顔のは、こう言った。
「一日遅れたけど、誕生日おめでとう。プレゼントは、私の愛の告白で構わないわよね?」
その言葉を聞いて嬉しくなった僕は、未だに照れているに、沢山のキスをした。
愛してるよ。
誰よりも、愛してる。
嫌いでも、構わないよ。
君が、僕を愛してくれるというのなら・・・・・・。