「崇さん!」
乙女の心
呼び止められた。
この声の主は、誰なのか知っている。
最近、邦光と仲が良い女性。
彼女の名前は、という。
とても、素敵な女性。
だが、俺は話しをした事がない。
俺は、邦光の隣にいるだけ。
そして、頷く。
黙って、見つめている。
何も言わずに、沈黙を徹している。
話したい。
二人だけで、話しをしたい。
どんな事でも、構わないから。
くだらなくたって、関係ない。
ただ、彼女と話しがしたかった。
彼女の名前を、何度呼びたいと思ったか。
ずっと・・・・・心の中で読んでいた。
、、・・・・・。
彼女が、好きだ。
彼女が、愛しい。
彼女の事を考えると、苦しい。
彼女の事を考えると、幸福になれる。
、、・・・・・。
この気持ちを、伝えたい。
何時だって、君の事だけを。
ホスト部で、活動している時だって・・・・君を想っている。
話したいと思っていた彼女が、今・・・・自分の目の前にいる。
そして、俺の名前を呼んでくれた。
俺に、何か用なのだろうか。
もしかしたら、邦光に用事があるのだろうか。
彼に、伝言してもらいたい事が・・・・?
そう考えたら、心臓の辺りが痛くなる。
肺が、おかしいのだろうか。
呼吸が、上手く出来ない。
「崇さん?」
彼女が、心配そうに俺を見つめる。
「大丈夫・・・だ・・・。」
どうにか、返事が出来る位には呼吸が出来ていた。
それが、幸いといえば、幸いか。
俺が大丈夫といっても、彼女は未だに、心配そうな表情をしている。
「話しは・・・・?」
「え?あ・・・・あのー・・・・その・・・・・・。」
「・・・・・・???」
何か、言いたそうなのは・・・・分かる。
ただ、何を言いたいのかが、分からない。
もしかしたら、邦光にお菓子をあげたいから、一緒に選んで欲しいのだろうか。
それならば、喜んでやろう。
彼女と、一緒にいられるならば。
「あのー・・・・・あのー・・・あのー・・・・・。」
まだ、戸惑っている。
そんなに、言いにくい事なのか?
「す、すすすすすす好きです!!!!付き合って下さい!!!!」
「好き?」
「は、はい!」
「邦光に、伝えれば良いのか?」
「・・・・・・・・・・・は?」
彼女は、開いた口が塞がらなかった。
俺が、何か間違った事を言ったのだろうか。
否、間違っていない・・・・・筈。
「・・・・・・本当に、分かっていなかったんだ。」
「私は、崇さんが好きなんですよ?」
彼女は、俺を好きと言ったのか・・・・。
これは、夢じゃない・・・?
「本当・・・・か・・・?」
「勿論です。」
「そうか・・・・・。」
どうやら、俺だけが知らなかったらしい。
環も、鏡夜も馨や光、ハルヒも知っていた。
・・・・・・そして邦光も。
彼女が・・・・・が、俺を好きだという事を。
邦光と仲が良さそうに見えたのは、彼女が俺の事について相談していたから。
俺は、彼女の気持ちを分かっていなかった。
「・・・・・・済まない。」
それから。
それから。
「俺も・・・・が、好きだ・・・・。」