俺は、最近一人の女を目で追っている・・・・・。
〜初恋〜
あれは、何時の事だったか。
定かじゃないが、俺が女遊びをしていた頃だったのは間違いない。
隣にどうでもいい女が居たのを覚えている。
まぁ、顔なんかは覚えていないがな。
「跡部君、日直の仕事やって。」
そう突然背後から声を掛けられた。
「あ〜ん?」
その時、俺はこれからお楽しみの時だった為、不機嫌な声を発した。
「ほら、日誌。」
「お・・・・・。」
「問答無用。さっさとやる。私も忙しいのよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・俺に拒否権はないのかよ。
「と、言うか、俺を引っ張るな!!!」
女にズルズル引っ張られるなんて格好わりぃ!!!
こんな所を、テニス部の奴等に見られたらどうなるか・・・分かってんのか!?この女。
「分かるわけ無いでしょ。」
「俺の思考を読んだのか!?」
何なんだ、不思議な女だな。
こんな女・・・・初めて見た。
「さ、二人でやれば早く終わるんだから。」
「・・・・・まぁな。」
そう言えば、同じクラスだったのにな。
確か・・・・・っていう名前だったな。
「・・・・・・・・・・・・・綺麗な名前だな。」
「何が?」
・・・・・・・・しまった。俺とした事が。声に出してしまった。
「ねぇ、何が?」
は、俺に”何が綺麗なのか”と、聞き返してきた。
畜生・・・・なんか、その不思議がっている表情も可愛いじゃねぇか。
「な、何でもねぇよ。」
「そう?何だか焦ってる跡部君って可愛いね。」
そう言って、は可笑しそうに笑い出した。
「・・・・・・・笑うなよ。」
俺は、の額を軽く突いた。
だが、可笑しい。
普段ならば、馬鹿にされて気がしていい気がしないし、不機嫌になる俺が、
今回はどうした事か、そんな嫌な気分にはならなかった。
俺らしくない。
「御免御免。でも、跡部君は本当に女の子に人気があるんだね。」
「そんなんじゃねぇよ。どうせ、顔だろ?」
そうだ、いつだって寄ってくる女は、同じ理由だ。
くだらない。だが、これは紛れもない現実。事実。
それは、誰にも変える事は出来やしない。そう、この俺でさえ。
「そっか、男は顔で選ぶモンなんだ。」
納得すんなよ。
なんか・・・・胸がいてぇな。
何なんだよ、これは。
キブンガワルイ。
「あの子は何人目?」
そんな事、聞くなよ。
「好きなの?」
違う。好きじゃない。
「何故、女遊びをするの?」
「・・・・・・・・わからねぇよ。」
分からない。
それが、俺の本音。
そうだ、分からないんだ。
何故だ?
どうしてだ?
女のせいか?
いや・・・・俺自身の問題だ。
「分からないんだ。じゃあ、答えが見つかると良いね。」
俺は、その時のの微笑みを忘れる事は出来なかった。
