君がね。
さぁ、
いない事は、分かっていたんだ。
君は、この場所に存在しないって事は。
毎日、毎晩。
君は、どうして俺の夢の中に出てくる?
何かを伝えたいのか、今にも泣きそうな表情で、俺を見つめてくる。
彼女は、何かを伝えようと、俺に向かって必死に叫んでいる。
しかし、俺には何を言っているのか聞こえない。
俺は、彼女に向かって、手を差し出す。
彼女は、俺の手を掴もうとする_____。
「・・・・・・・・また此処で終わりかよ。」
差し出した手を見つめる。
夢の中の筈なのに、彼女は、俺の手に触れていないのに、触れられた様な感覚がある。
(可笑しい事だ・・・一体、何を伝えたいのか分からないな。)
俺は、一度も会った事がない。
今まで、遊びで付き合って来た女の中にもいない。
それなのに、どうして俺の夢の中に出てくる?
「けーいご。」
朝から、女が校門で待ち伏せをしていた。
昨日、一日だけ付き合ってやってこれかよ。
勘違いするなって言ってやりたい。
どうして、たった一回だけなのに勘違いをするのだろうか。
理解しかねるな・・・・いや、こんなくだらない事を考えても無意味だ。
「ね、学校サボらない?」
女は、軽々しく俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。
その瞬間、俺は憤りと、強い香水の匂いで、物凄く気分が悪くなった。
腹立だしい・・・・気安く触るな。
俺は、お前の恋人じゃない。
ましてや、見せびらかす為の物でもない。
そんな事をする権利が、この女にあるのか?
いや・・・・・。
ある筈がない。
そうだ、もしあるとしたら。
あるとしたら、それは・・・・・。
「おい、勘違いするんじゃねぇよ。」
俺は、女を突き飛ばしていた。
怪我をしようが、恥をかこうが、俺の知った事じゃない。
いなくなってしまえば良いんだ。
(彼女・・・・・彼女は・・・・・。)
俺は、女を置いて教室へと向かう。
こんな場所で、立ち止まっている時間はない。
「いねぇよな・・・・此処には。」
彼女は毎晩、俺に何を伝えたいのだろうか。
俺には、分からない。
いつもいつも泣いている。
だが俺は、抱き締めるどころか、慰めの言葉さえ口に出来ない。
こんなもどかしい事があるか?
時々、街中で彼女の様な女を見ると、目で追ってしまう。
彼女だと思い見つめるが、違う事が分かると、やはり落胆の色を隠せる事は出来ない。
何処かにいるなら、出会わせて貰えないだろうか。
俺は、ぼんやりと考えていた。
