君がね。
さぁ、
目覚めさせる。
何の力も無い、俺達が?
そんな事が、可能なのだろうか。
俺は、無理だと思った。
何故なら、そんな力が無い。
確かに、金はある。
この場合、金は意味を為さない。
「彼女は、外部と自分を遮断している。」
「遮断?」
それは、どういう意味だ?
ただ、深い眠りに就いているだけじゃないのか?
それを、遮断と言うのだろうか。
「目覚めるのが、怖いんやろな。現実を、見ない。見ようとしない。夢を見ている方が、楽や。」
「何故?」
「何故やて?阿呆やな・・・夢の中の方が、幸せやないか。」
そうだろうか。
夢の中は、一人だ。
だから、彼女は泣いていたんじゃないのか?
一人は、淋しいから。
悲しいことしか、ないから。
失うモノは、確かにないだろう。
だが、得るものも、何もないだろう。
進化が、無い。
成長が、無い。
不変だ。
彼女は、変わらない。
現実を知らないから。
ずっとずっと、夢の世界だから。
「助けてやりてぇな・・・・。」
「そうでしょ?夢を取り戻さないとだから。」
「・・・・・それは、違うぜ。」
「それ、どういう意味?」
「俺達の、為じゃねぇよ。彼女・・・・・の為だ。」
自分の為じゃ無い。
俺は、彼女の為に、彼女を助けたい。
もしかしたら、そんなの望んでいないかもしれない。
俺の、偽善かもしれないけれど。
「やろうぜ。あの“茨”を助ける。」
「せやけど・・・・彼女には、近付けないで。近付こうとしたら、確実に“死”が待っている。」
「厄介だな・・・・このセキュリティは、設計者でも、解除は難しいらしい。」
「跡部君の力で、何とかならないの?」
「・・・・・なっていたら、既に手を打っている。無理だから、悩んでいるんだろ。」
あの、部屋中のコード。
そして、赤外線によるもの。
警報機。
何もかもが、敵だ。
その中を、どうやってくぐり抜けていけば良いんだ?
「難しいな・・・・。」
これじゃあ、お手上げだ。
彼女に、指一本触れることも不可能だから。
もう少し、時間が要る。
だが、こうしている間にも・・・・夢は、盗まれ続けている。
どうすれば良い・・・・・考えるんだ・・・・。
「彼女の夢に、入れたら良いのにね・・・・・。」
が、呟いた。
