「・・・・・何ですか、それは。」
知らないから、
彼が、私に言った一言。
あの台詞だけは、受け入れることは不可能に近い。
冗談じゃ、ない。
“を、俺にくれないか”
立海のテニスコートに、やって来た彼が発した言葉。
突然、馬鹿な事を言う人だと思った。
頭が、可笑しいんじゃないかと・・・・・思う程に。
私が・・・・・私が、さんを手放すとでも?
彼女以外、考えられない位愛しているのに?
私に、さんと別れろと言うんですか・・・・・・。
「済みませんが、話になりませんね。私は、別れる気はありませんよ。」
「・・・・・・なら、強引に奪うまで・・・・か・・・。」
彼は、笑っていた。
宣戦布告。
私に対して、ソレをしてきた。
「・・・・・いい加減にしたまえ。跡部君。」
「柳生、俺はふざけて言っているんじゃねぇよ。は、俺が奪う。」
「・・・・・・・・・・・・。」
殴りたかった。
いっその事、滅茶苦茶に殴ってやろうかと思った。
でも・・・・そんな事をしてしまったら、暴行事件となって、テニスの大会に出られなくなってしまう。
私だけではなく・・・・皆さんも・・・・・。
それだけは、避けなければならない。
私一人の為に、皆さんが出られなくなるなんて・・・・・。
「殴りたいなら、殴れよ。その代わり・・・・・俺も、殴らせてもらうぜ?」
「君という人は・・・・・。」
「はん。何だ?お前は、ただ単に奪われない様にすれば良いだけだろ?簡単じゃねぇか。」
「っ・・・・・・。」
確かに、そうだ。
さんは、私を想っていてくれている。
私だけを、愛してくれている。
だから・・・・・・・・。
だから、不安は・・・・・・・ない。
(それなのに・・・・何でしょうか・・・この、気分の悪い感情は。この、不安になる感情は。)
さんは、私だけのモノ。
跡部君には、渡さない。
例え、私とさんが違う学校でも。
私は、離したくない。
「しかし、私はさんを賭けの対象にする気はありません。」
「あーん?賭けじゃねぇよ。これは、お前と俺の・・・・闘いだ。じゃあな。」
それだけ言い残し、彼はテニスコートから去っていってしまった。
(大変な事に・・・・なりましたね・・・・。)
とにかく、どうにかしなければ。
彼は、どんな行動に出るのだろうか・・・・・。
不安で不安で、仕方がない。
私なんかよりも、経験がある。
それに・・・・・先が読めない。
「・・・・・・・・・・・・。」
私は、携帯を取り出す。
さんと、色違いの携帯電話。
彼女と、二人で選んだ携帯を。
勿論、愛しい彼女に電話をする為に・・・・・・・。
