不思議な子だ。
恋の予
感
現れたら、すぐに消えて。
消えたら、また現れる。
僕は、出会った。
不思議な不思議な、女の子に。
名前を聞いたけど、何も言わない。
学年を聞いたけど、笑っているだけ。
何も、答えない。
何も、言わない。
何も、話さない。
何も、何も、何も。
「光。」
「・・・・・・・・・・。」
「光?」
「・・・・・・・・・・。」
「光ってば!!!!」
「うわっ・・・!な、何?馨。」
馨の声で、一気に現実に引き戻された。
此処は、音楽室。
僕達は、お客さんを持て成さなければいけない立場。
それなのに、僕は他の事を考えていたんだ。
そう、庭園で会った・・・・・あの、名前もしらない女の子の事を。
「物思いに耽っていらっしゃる光様も、素敵ですわ!!」
「私、もう・・・・惚れ惚れしてしまって・・・・・。」
「そう?嬉しいな・・・・僕はね、君が美し過ぎて・・どう口説けば良いのか考えていたんだ。」
嘘。
これは、真っ赤な嘘。
目の前の女の子の事なんて、考えていない。
でも・・・・・この位の嘘なら、構わないよね?
言われた子だって、喜んでいるんだから。
「光、最近変だよね。」
「そ、そんな事ないって。何時もと同じでしょ?」
「ううん。違うよ。僕には、分かるんだ。」
帰宅後、馨が僕を問い詰めて来た。
確かに、この数週間の僕は、可笑しい。
それは、自分でもよく分かってる。
どの位可笑しくて、どの位変で、どれだけ気が抜けているのか。
きっと、相当可笑しいと思うよ。
「光、僕にも内緒なの?」
「内緒・・・・というか、説明出来ないんだよ。馨。」
自分で、自分対して説明出来ないのに、どうして他の人に説明が出来るんだろう。
僕は、そんなに器用じゃない。
「じゃあ、原因は?」
「原因・・・・・は・・・女の子かな。」
「女の子?光、好きな子いたの?」
「うーん・・・それが、説明出来ないんだよ。」
「ね、ね。その子、どんな子なの?」
「どんなって・・・・不思議な子だよ。とってもとっても、不思議なんだ。」
会えるのは、庭園。
他の場所では、会った事がない。
どうしてなんだろう。
一体、何処にいるんだろう。
捜したい。
でも、庭園で会えるなら、それはそれで良いのかもしれない。
「・・・・・・・・ま、頑張ってよ。僕、応援するからさ。」
「頑張るって・・・応援って・・・・。」
それは一体、どういう意味?
僕に、どう頑張れっていうの?
「応援は、嬉しいけどさぁ。」
僕は、知らなかった。
彼女が、どんな存在なのか。
今は、何も理解できていなかったんだ。