不思議な子だ。
恋の予感
「・・・・・・馨はさ・・・分かっていないんだよ。」
永い永い、沈黙の中。
光は、ゆっくりと言葉を紡ぎだした。
僕は、光を見る。
光は、僕を見ない。
見ているのは・・・・・庭園。
そこには、誰も存在しない。
僕に、見えていないだけなのだろうか。
華が、綺麗に庭園を彩っているだけなのに・・・・・。
「馨、僕はね・・・・可笑しくなってない。今まで通り、常陸院光なんだよ。ただ、馨が分かっていないだけ。」
「意味・・・分かんないよ。僕が、光の何を分かっていないの?!」
「説明したって、分かんないよ!馨には、分からない!!」
凄い剣幕だった。
僕の知っている光は、こんなんじゃなかった。
違う。
目の前にいるのは、光じゃない。
光じゃ・・・ないよ・・・・・。
じゃあ・・・・・・・・・じゃあ、彼は誰?
僕の知っている光は、何処?
「喧嘩をした?」
意外な、一言。
以前にも、そんな事があった気がする。
けれど、あの時は騙していただけだった。
もしかしたら、今回もそうなのかも知れない。
「本当に、喧嘩だよ。まぁ・・・・ある出来事に関しては・・・ね。」
馨は、悲しんでいた。
演技でもなく、本気で。
光と、分かち合えない。
何時もと、どう違うのか・・・・・。
「光は・・・さ・・・・惑わされているよ。僕は、そう思うよ。」
「だが、それはお前の意見だ。本人が“正気だ”と言えば、それまでだ。」
「違うよ。殿は、分かってない。」
馨は、もう一度“分かっていないんだよ”と呟いた。
「分からなくて、当然だ。俺は、万能の力を持っている訳じゃないんだからな。」
「・・・・・・・・そうだよね。」
何かが、崩れていく気がする。
俺には、何も出来ないだろうか。
そんな事を考えていても、時間は動きを停めてくれない。
「変な動きを、見せてくれるね・・・・・さて、どうしようか・・・。」
笑っていた。
暗い闇の中で一人、佇みながら。
場所は、暗くて分からない。
さぁ・・・・始まりの合図が鳴り響く。
一緒に、行こうじゃないか。
彼女は、知っている。
彼は、知らない。
「僕は、どうしたら良いかな・・・・・?」
誰も、答えない。
それも、良いだろう。
自分自身の、心の中に、答えがあるのだろうから。
