”馨さんは、本当に光さんがお好きなのですね・・・。”
どうしたら、良いのか
好きな子に、そんな事を言われてしまった。
確かに、僕は、光が好きだよ?
でも、でもね?僕は、それ以上に、君が好きなんだ。
分かる?分かってくれている??
君は、分かっていないだろうね。
僕が、あんなにも、君だけを見つめているのに。
ホスト部をやっていても、君の事しか考えてもいなければ、想ってもいないのに。
分かっていない。
この感情。君への想い。
苛々してしまう。
澱んでしまう、僕の胸の中。
汚れている。汚れて汚れて汚れてしまっている。
そんな中、時々考える。
君は、白。僕は、黒。
光と陰の様な存在。
そんな、彼女に触れて良いのか。不安になる。
彼女に話し掛けるのは、勇気がいるんだ。
物凄く、時間が掛かる。何度、溜息をついた事か。
頑張って頑張って頑張って。
あれから、少し親しくなった。嬉しかった。
だって、君と話せたから。僕の名前を呼んでもらえる様になったから。
君は、一度も間違える事がなかった。僕と光の事を。
嬉しいよ。本当に。
だけど・・・・・・・。
「はぁ・・・・。」
「どうしたんだ?馨。今日は、随分と元気がないじゃないか。」
元気が、ない。確かにその通り。元気がないよ。
殿にも、分かっちゃうんだ。
でも、当然だよね。溜息ついてるんだから。
「まぁ、今の気分を色で例えれば、ブルー?そんな感じなんだよ。
僕ってさ、傷付きやすい人間だから。繊細なんだよ。繊細。分かる?」
「分からん。大体、お客様の目の前でそんなんじゃあ、良くないだろ!ちゃんと接客しろ。」
煩いな。殿は。
自分が、同じ状況ならば、絶対にこうなる筈なんだから。
今は、姫と仲が良いから、そんな事を言えるんだ。
そう、殿は今、幸せの絶頂。だから、そんな事を微塵にも感じないんだ。
「環、今はそっとしておけ。馨は、どうやら、彼女の事で頭の中が一杯みたいだからな。」
「うん?彼女??」
ウゲッ。鏡夜先輩。
何も言わないでよ。知っているのは、光だけなんだから。
い、いや。鏡夜先輩が知っているとは、思わなかった。分からない様に、頑張って来たのに。
「彼女の名前は、。
桜蘭の中等部の三年生。財閥の令嬢。
財閥と言えば、世界でも通用する。
鳳や須王よりも上と言っても・・・・かなりハイレベルな御令嬢を好きになったな。馨。」
「うっ・・・・べ、別に!好きになるのにそんなの関係ないだろ!!」
「だが、俺達には、自由は・・・・ない。」
あぁ、分かってる。分かってるんだ。そんな事。
彼女は、雲の上。僕は、雲の下。
届きそうで、届かない。そんな存在。
悲しいよ。どうしても、壁があるんだから。噂によると、婚約者がいるって言うし。
これって、もう俺ってフラれたも同然?
「婚約者か?婚約者なら、いないぞ?」
「・・・・・・・・・ほ、本当に?!」
「あぁ、確かな情報だ。俺の情報に嘘はない。
まぁ、何十回と言って良い程、婚約の話しはあったみたいだが、全て拒否しているな。」
鏡夜先輩は、秘密のノートをパラパラとめくりながら話す。
婚約者がいない?うわ・・・凄く嬉しい。というか、人の心読んだの?!
今、鏡夜先輩、俺の心の中を読んだ?怖い。やっぱり、先輩は侮れない。
でも・・・・・。
「そっか・・・いないんだ。婚約者・・・いないのか。」
何だろ、少しは心が晴れた気がする。
でも、問題なんだよ。彼女、僕の事どう思っているんだろう。
聞けば良いって、言うかもしれないけど、無理に決まってるじゃないか。
怖い。彼女が、僕の事を好きじゃないって言うんじゃないかって。
そうしたら、きっと、今の関係は崩れてしまうんだ。
戻すことは、出来なくて。これから、ずっと話す事も出来なくなってしまう。
どうしたら、良いだろう。
その時だった・・・・・。
