「デートして下さいっす!」
そんな事を言い出したのは、年下の彼。
申し出
デート。
それは、恋人同士がするんじゃないかと、私は、認識している。
なのに、恋人同士ではない私達が、デートするのは、可笑しくはないのだろうか。
私の、考え過ぎなのだろうか?
「それで、此処か。」
切原が連れて来たのは、映画館。
どうやら、観たい映画があったらしい。
なんと、題名からすると・・・・・・なんだ?私が聞いたこともない映画の様だ。
「前々から観たいと思ってたんすよ。」
切原は、そう言って、私の手を握る。
「君、何で手を繋ぐんだ?もしかして、私が迷子になるとでも思っているのか?」
確かに、私は、一般女子の平均身長には届かないかもしれない。
だが、迷子になるなんて、言語道断だ。
私は、生まれてこのかた、迷子になった事なんてない。
それに、方向音痴でもない。
だから、そんな風に思って繋ぐなら、止めてもらいたい。
「違うっすよ。繋ぎたいから、繋いだだけっすよ。俺、先輩と前からこうしたいって思ってたんすよ?」
嬉しそうに。
本当に、手を繋げた事が、幸せでならないかの様に、笑った。
その表情には、嘘偽りは、見られなかった。
切原は、なんて奴なんだろうか。
時に、弟みたいな感じで。
その隙間から、時々男らしさが見られる時があって。
その時、心臓の鼓動が、凄く速くなる。
「さ、早く入りましょうよ!ね?」
そう言うか否や、私の腕を引っ張り、映画館の中へと入っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
何だ。これは。
切原。君は、小学生か?
こんな・・・・こんな・・・・・・こんな、戦隊モノを観たかったのか?!
「全く・・・違う人間を呼べば良いものを・・・・。」
上映が終了し、映画館から出た後の私は、かなり不機嫌だった。
もっと、マシな映画を観たかった。
どうして、切原は、この映画を選択したのだろうか。
現在、この時間、この場所に、切原と居るのは、別に私でなければならない理由がない。
あるのならば、教えてほしいものだ。
「よかったっすね!先輩!!特に、ブラックが突っ込んで火達磨になる所なんてみう!!最高!感動っすよ!!」
「そうか。それは、良かったな。ハハハハハ。」
何でそんな場面が良いんだ。切原。
私は、感動なんかしなかった。
寧ろ、馬鹿馬鹿しかったぞ。
大体、火達磨になる必要が何処にあったんだ?
あんなの、経費の無駄の様な気がしてならない。
飛び込んだって言っても、海の中だ。
そんなのの何処に、感動しろと?
「先輩は、何処が良かったっすか?」
「聞かないでくれないか。私は、感想は言わない主義だから。」
「えーっ!!!俺が言ったんだから、先輩も言うのが当然っしょ!約束したじゃないっすか!!」
・・・・・・・・・・どんな約束だ。
「君、私に命令しないで。前にも言った筈。私は、嫌いなんだから。」
あぁ、少しでも時めいてしまった私が馬鹿みたいだ。
駄目だ。
正気になれ。私。
「はぁ・・・・君、もう帰るか。」
「え?!駄目っすよ!!帰っちゃ駄目!!」
そう言うと切原は、慌てて私の腕を掴んだ。