出会えた、この瞬間。僕は感謝すると誓うよ。
「・・・・・・・・遅いですねぇ。」
一体、何をやっているのだろう。
あの日、僕と約束した彼女は・・・・・・一週間経った今でも笑ってくれない。
確かに、最初の出逢いは、最低最悪過ぎて、何処が良い出逢いだなんて見つけられない程酷い出逢いだった。
そんな事は、重々承知の上で彼女には条件を出した。
結果、嫌な顔をしながらも僕に会いに来てくれる。
それは、とても嬉しい事。
僕にとっては、一日一日が幸せになれる位嬉しい事だった。
しかし、彼女・・・・・・・・にとっては最低最悪、寧ろ地獄の方がどんなに良いかと延々に述べる事が出来てしまうくらい嫌な日々なのだろう。
何時かは、僕の事を好きになってくれる。
僕の事を、自然と考え・・・・・想ってくれるのでは?なんて・・・・甘い考えなのだろうか。
一体、どうしたらこの永い距離は短くなってくれるのだろう。
焦っても仕方がない事は、知っている。
知っているけれど、僕の気持ちは焦るばかり。
は・・・・・・・義務でなければ、僕に会いに来ないだろう。
自然と、脚を運ぶのを止め、また想い人の傍に居続けるに違いない。
そう考えてしまう度、また自分の中で醜い感情が増殖し始めた。
こんなモノ・・・・・・無くなってしまえばしまえばいいものを・・・・。
「遅くなりました。」
「本当に遅いですよ。遅すぎる余り、僕は並盛まで迎えに行ってしまう所でした。」
「それはご遠慮願いたいですね。只でさえ、貴方は敵なんですから。」
“敵”
その一言が、とても辛かった。
その一言が、とても悲しかった。
あぁ・・・・・・・こんなにもまだ遠いのかと、思い知らされる。
遠すぎて、遠くなって、埋まる事は一切無い距離。
どんなに、君に優しくしても。
どんなに、僕が君を想っても。
どんなに、僕が君が来ない事で不安になったとしても。
全く埋まらない。
僕は埋めようと努力をしているのに、君は離れる事ばかりを考えている。
この違いは、明らかに大きい。
こんな事ならば、あんな条件を突き付けなければ良かった。
そうすれば、例え僕じゃない人物に向けた笑顔だとしても、毎日見る事が出来た筈なのだから。
「後悔って、本当に誰でもするんですねぇ。」
「何を突然。」
「自慢じゃありませんが、僕は後悔なんて生まれてこのかたした事がないんですよ。」
「本当に、自慢になりませんね。」
「まぁまぁ、そう興味ないなんて言いたそうな顔をしないで下さいよ。僕の事を少しは知りたいでしょう?」
笑顔でそう言ったら、に冷めた目で見られてしまった。
君は、本当に僕の事が嫌いなんですねぇ。
あぁ・・・・・・本当に殺してしまいたいですね。
勿論、ではなくあの生意気で、弱いくせに強がっている様な委員長の方ですよ?
こんな事口には出しませんがね・・・・・またしても、君に嫌われてしまいますから。
「君に、あんな条件を出さなければ良かったと今更ながら後悔してみました。」
「それはそれは、本当に今更過ぎる後悔ですね。」
流石、鋭い突っ込みをしますね。
そんな貴女も、大好きになってしまいそうですよ。
こうして抱き締めている間も、嬉しそうに笑ってくれれば良いんですけど。
まるで、人間じゃないモノを見るような目をしないで下さいよ。
僕としては、眠っている間もこうして抱き締めていたいんですけどね。
「馬鹿言わないで下さい。この愛刀の餌食にしてやりますよ?」
「辞めてくださいよ。餌食にしたって構いませんが、この僕に敵わない事は重々承知の上でそんな強がりを言っているんですか?
無駄な事はしない方が利口だと思いますがね。それに・・・・・・それにですね・・・。」
そんなに嫌な態度をとるならば・・・・・アレをこの世から抹消してしまいますよ?僕にとっては、歩く事よりも簡単なのですから・・・・・。
・・・・・・・・・・また、やってしまった。
ついつい、感情的なってにまた嫌われる様な事を言ってしまった。
本当なら、こんな事になる筈ではなかったのに。
今日こそは、楽しい時間にしたいと決心したというのに。
一体、何をやっているのだろう。
一体、これから何度後悔していけば良いのだろう。
分からない。
全くと言って良いほど分からない。
どうしたらいい?
どうしたら、この僕を見てくれるのですか?
貴女は、それ程までにあの男を想っているのですか?
僕には、一人の男として見る価値もありませんか。
憎い 憎い 憎い。
本当に、憎い。
きっと、貴方が振り向いてくれない限り、僕の中の憎悪は消えることは無いでしょう。
そう、死ぬまで。
自分の存在が、この世から消えてしまうまで。
「・・・・・・・・馬鹿ですね。大体、始めから敵対しているのにどうやったらそこから恋愛感情が生まれてくるのかが私としては不思議でなりません。」
「クフフ・・・・・・そんなモノ、感情には何ら関係ないからですよ。関係があるとすれば、ただ単に感情を抑える動機でしかありません。」
「動機?」
「敵か味方かなんて関係ありませんよ。だから、僕を好きになってもらいたいものですね。」
「変な男。」
実際、馬鹿じゃないかというよりも・・・・・馬鹿なんだなと思ってしまった。
頭が良さそうに見えても、人は見掛けによらない。
やはり、外見と内面は不一致なのだろうか。
“自分を、一人の男として見て欲しい”
そう言った時の彼の表情からは、偽りは全く感じ取れなかった。
あんな外道でも、あんな表情をするのか。
あんな奴でも、後悔なんて言葉を知っているのか。
あんな男でも、人を愛する心を持っているのか。
この一週間、ずっと嫌な気持ちで六道骸がいる場所へと赴いていた。
本当に、嫌だったから。
憂鬱過ぎて、どうにかなってしまうんじゃないかと思ってしまうから。
六道骸が、嫌い。
六道骸が、憎い。
六道骸という存在自体、消去してしまいたい。
この一週間で、六道骸を良く観察してきたと思ってきたけれど、それは全くの勘違いだったらしい。
私は、六道骸を分かっていなかった。
六道骸の何も分かっていなかった。
どうして、分からなかったのだろう。
「・・・・・・・・私は、何を言っているんだか。」
馬鹿だ。
自分は、一体何を考えているのだろう。
分からなくて良い。
そうだ、私は分からなくて良いんだ。
私が、六道骸を解る必要なんて、無いし・・・・・・その理由も、何処にも存在しない。
大事な人は、委員長で・・・・・私はただ、あの男が飽きて捨てるのを待てば良い。
そう・・・・・・・・・・。
「待てば・・・・・良いだけ。」
簡単だ。
簡単なのは、分かっている。
委員長・・・・・・・早く、貴方の傍に戻りたい。
貴方の傍に、仕えていたい。
それが私の、唯一の望みになるのだから。
