悲しそうだった、彼女。
ねぇ、君は誰?
知らない、あの娘
「やっと会えたんですか。」
「あぁ、会えた。」
俺は一応、柳生に御礼を言っておこうと思い、奴に報告をした。
昨日、部活に戻った直後に、真田にこっぴどく怒鳴られ、危うく殴られそうになった。
もし殴られていたら、いくら真田でもただじゃおかん。
俺には、順序があったから。
テニスよりも、彼女に会って話をする事が、先決だった。
テニスは、いつでも出来る。
だが、に会うのには、運や時間が必要だ。
だから、走って行った。
テニスを捨てて。
真田にも恋人がいるのに・・・・・そんな俺の気持ちが分からずに殴るなら、俺は仕返しを企んでやろうと思っていた。
だが、真田は・・・・・。
「さっさとやれ。帰りが遅くなっても知らないからな。」
あいつは、俺を殴らなかった。
かなり意外な行動。
真田の中で何かが、変わったのだろうか。
「それで?これから、どうするつもりですか?」
「決まっとる。先ずは仲良くならんとな・・・・素っ気ない態度をされるのは、悲しい。」
そう。
あの態度は、かなり辛かった。
あんな風に、冷たい態度は嫌だ。
もっと親しくなれば、きっと変わってくれるに違いない。
俺は、そうである事を願いたい。
「保健室ね。」
今日、保健室に行ってみよう。
彼女に、会えるから。
保健室にいると、言ってくれた言葉を信じてみよう。
信じなければ、始まらない。
疑うのは、簡単だけど・・・・信じるのは、なかなか難しい。
「一体何があったんじゃ・・・・・。」
保健室にいる理由が、きっとあるんだろう。
何か、持っていこうか。
色々と、長く話が出来る様に。
俺は、彼女を笑わせる事が出来るだろうか。
「さて・・・・・と。俺、ちょっとサボるから。上手く頼むぜよ、柳生。」
「え、仁王君!サボるのはいけませんよ。」
「堅い事言うんじゃなか。」
さて、怒鳴る柳生は置いておいて、保健室へと向かった。
何だか、保健室へと向かう廊下が長く感じられる。
さぁ、彼女はいるのだろうか。
俺は、早足で保健室への廊下を歩いて行った。
