『…人多すぎじゃけん』立海・仁王は、真田の熱血発言が苦手で逃げてきた。

『お?ここが良さそうじゃ…』


真田の熱血が収まるまでと、芝生の上に寝転んだ。







































〜Fate〜

















































o






『あぁ、いたいた。仁王君。そろそろ帰る支度を始めないと……。』

真田君が癇癪を起こして周りの人に迷惑が掛かってしまいますよ。と寝転がる仁王に向かい、彼を捜しに来た柳生は告げた。



『おぅ、柳生。』

仁王は面倒臭そうに腰を上げる。

『別に俺がいなくても…』

と言いながら柳生と歩き出した。



『全く、貴方と言う人は……すぐにフラフラと何処かに行く癖がありますね。治したらどうですか?』

良くないですよ?と柳生は仁王を叱る。

柳生のセリフに頭を掻く。

『んな事言っても、しょーがないじゃろ』

ふぅ、と溜め息をついて仁王は少し早歩きになる。



































そんな時だった……。

























『そこのデカイ二人!邪魔!!』

突然後ろの方から”邪魔だ”と叫ばれたのだ。

『………?』

柳生達が不思議そうに振り向くと、自分達目掛けて走ってくる人物が一人。

『御免!どいて〜!!!』




『なんじゃ?』

仁王は、自分達に向かってきたものをヒョイっと抱きかかえた。



『危ないの。』

持ち上げたものを見上げた。

『………オイ、離せ。私は今逃げている最中なんだ。』

危ないのは、お前等がゆっくり歩いているからだ。こん畜生。

彼女は、初対面の仁王の頬をつねった。


『逃げてる?誰からです?』

つねられている仁王を無視し、柳生は抱きかかえられた彼女に問いた。

『おい、柳生。俺は無視か』

仁王は軽く溜め息をついた。

『決まってるだろ?氷帝のあの馬鹿からだ。』

何で分からないんだよ、と彼女は自分が来た方角を指さす。

柳生は初対面でそれが分かったら、人間じゃない気もしますが……と思いながら

もまた後ろを振り向く。

『…あぁ』

仁王は、ますます降ろせんなと言って彼女を抱きしめた。



『離せや。私は、これ以上お前等と話している暇なんぞないんだからな。』

一瞬の隙をついて、仁王の腕の中から逃げ延びた彼女は、あばよ。もう二度と会

わないだろうがな。と言いながら走り去る。


走り去る彼女の影が小さくなるまで見送る二人。ただ一人だけなぜか違う。

『…柳生、俺心臓おかしいから保険室行くわ』

『ついでに念の為、頭の中も検査してもらったらどうです?』

今の発言は、全く訳が分かりませんからね。その方が良いと思いますよ。

と柳生は、可笑しい発言をした仁王に向かって冷静に言った。

『…そこまで言うか』

仁王は淡々と話す柳生に溜め息をついて歩き出す。

『…また会いたいのぉ』ぼそっと、彼女が去った方向を見据えた。


『会いたいと言っても、どうやら彼女は氷帝の学生の様ですし……東京と神奈川

。近いようで遠い。それに、名前も聞かずに会いたいとは無理に等しい。』

柳生は、眼鏡を掛け直しながら、グサグサと刺のある発言を仁王にする。

『…んなこたわかっとる。運命だったらまた会えるじゃろ。』

仁王はやたら前向きに考えてみた。



『会えると良いですね。』

最後まで刺のある発言をする柳生。日頃、彼にはからかわれている怨みがあるの

だろう…。




しかし、数週間後二人は再び出会う事になる。



『跡部……何故私まで神奈川に来なきゃならねぇんだよ。』

彼女は目の前の学校を見上げていた。

『あーん?お前はうちのマネージャーだろうが。』

跡部は当たり前だろと門をくぐった。

『テメェが勝手に入れたんだろうが。』

舌打ちしながらも跡部の後を着いていく。





『それで?その後、会えたんですか?』

柳生は準備運動しながら仁王に尋ねた。

『…柳生、お前去りげにひどいな。』

まだ会えとらん、と言うと準備運動を続けた。

『会えていないんですか。それは残念ですね。』

お気の毒に……と全く気の毒とは思っていない発音で仁王に告げる柳生。

























そんな時……。


『おい、氷帝のテニス部の連中がきたぞ。』と柳が皆に告げる。

『なんじゃ?今日は普通に練習だけじゃ…あ。』

仁王は面倒臭そうに、頭を掻きながら柳の近くに行く。

目の前には氷帝レギュラー陣。だが仁王の目にはあの彼女しか写らない。


『なぁ、この学校のどこかに自販機ある?ってか跡部、お金。』

そんな仁王の存在に気付かずにキョロキョロと自販機を捜しながら跡部に金を出

せと命令する。



『氷帝の方から申し出があってな。今日まで秘密にしておいたんだ。』

全く聞こえていないにも関わらず、柳は仁王に話し掛ける。

『…会えた。』

仁王は、歩いてくる彼女から目が離せない。周りの音が一切入らない。



『なぁ、この学校のどこかに自販機ある?ってか跡部、お金。』

そんな仁王の存在に気付かずにキョロキョロと自販機を捜しながら跡部に金を出せと命令する。

『あーん?しょうがねぇな』

おい、樺地。と跡部はにお金を渡した。

『俺が案内してやろう』と、仁王はの前に出た。


『案内?ふぅん……まぁ、迷子になるのは嫌だからな。頼むよ、銀髪君。』

彼女は、以前会ったのは綺麗さっぱり忘れてしまったのか”この前会ったな”な

んて思考は全くない。

『…こっちじゃ』

彼女の反応に少し凹んだが、一緒にいたいと思った気持ちが強かった。




『お前、背が大きいな。私は背がでかい奴は好きだぞ。』

『…面白い事いうのぉ。』

仁王は“初めて言われた”と笑って言った。

『そうか?まぁ……背にこだわる人間はそんなにいないと思うがな。』

やはり、私が恋人にしたいのは自分より背が高い奴だ。と彼女は付け足した。

『…じゃあ、俺がもし好きだと告白したら付き合うか?』

仁王は言った後に後悔した。


『………なに言ってるんだ?ただ、背が高いだけで付き合う訳ないだろうが。』

お前は阿呆か?といった表情で仁王を見つめる。

『そうじゃの』

仁王は苦笑いしながら昌代を自販機まで案内した。

なんとも気持ちが満たされない。どうすれば満たされる?仁王は頭がパンクしそうだった。

『此処が自販機か……お前も何か飲むか?』

奢ってやるぞ。選べとパンク寸前の仁王に向かって命令する。

『あぁ、ありがとう』

仁王は、コーヒーを。と彼女に告げた。


『俺の名前は仁王じゃ。君じゃない。』

仁王は少しでも彼女に名前を覚えてもらおうと、言ってみた。

『仁王……?分かった。仁王、お前も何か飲んだら?』

仁王という名字をインプットしながら、奢るから飲めと再度命令をする。



『コーヒーね……大人っぽいな。跡部なんかオレンジジュースだぞ?見た目は大人っぽいのにな。』

可笑しいだろ?と笑いながらコーヒーの缶を仁王に投げる。

『ありがとう。』

仁王は見事缶を取り、蓋を開ける。

二人でまた戻ろうと歩きだす。


『到着……っと。さぁて、私は帰るかな。』

テニスコートに戻った途端、彼女は『帰る』宣言をしだした。

『もうるんか?なら俺と遊びにいかんか?』

仁王はなんとか彼女と会話が繋ぎたい為に誘ってみる。

『………テニスの試合あるんだろ?聞く所によるとお前の所の副部長怖いらしい

じゃないか。』

さっきから……なんかお前面白い奴だな。と彼女は笑う。


『…怖いが、お前さんと離れたくないんじゃ。』

仁王は真面目な顔で彼女を見た。

『……………熱でもあるのか?』

いきなり真面目な表情で変な事を言い出したので、仁王の額に手を当てて熱がないか確かめた。


『熱は無かよ。』

仁王は伸ばされた彼女の腕を掴む。

『おい!戻って来たなら記録書け。』

二人の姿を見た跡部は、彼女に向かって叫んだ。

『煩い、お前が書け。』

仁王に手を掴まれていて動けない為、戻るにも戻れない状態なのにその上命令されたのでムッとした表情になる。


『あーん?』

跡部は反抗された事に腹を立て、ふたりの近くに寄る。

『邪魔じゃの…。』

仁王は、ぼそりと発言したがゆっくりと手を離した。

『何だよ。お前といるよりマシだ。無理矢理連れてきやがって……記録書いて貰いたいなら他の女子マネ呼びやがれ』

文句あるか。売られた喧嘩は買ってやるぞ。そんな視線を跡部に向ける。


そんな時、仁王はまた彼女の腕を掴んだ。

『逃げるぞ。』

そのまま、彼女の腕を引っ張り仁王は走り出した。

『ちょ……何処に行くんだよ!!』

速い……流石運動部。腕を掴まれていなかったら着いていけない位だ。


『仕事、嫌なんじゃろ?』

仁王は、彼女を連れて屋上に来た。

『………まぁね。入りたくて入った訳じゃないし。』

そんなんなら好きな事した方がいいだろ?と仁王に言う。

『仁王は……テニス好きな訳?』

『…好きじゃよ。』

仁王は、ごろんと横になり彼女に目をやる。

『なら何でサボるんだよ。好きな事ならテニスしに行けば?』

私はもう帰るから……そう言って仁王に向かってテニスをしに行けと命令する。


『…つれないのぉ。そんな悲しそうな顔した奴をほっとけるかぃ。』

仁王は彼女の頬に触る。

『そんなに顔に出てるか……。』

仁王の発言に一瞬驚いたが、暫くするとやれやれと苦笑する。

『…俺で良ければ話してみんしゃい?』

仁王は上半身を起こし、隣にいる彼女の顔を除き込む。





『………いや。弱音は言いたくないんだ。そういう自分は嫌いだからな。』

仁王に話しをするのを頑なに拒否する。

『もうそろそろ試合も終わるだろ。戻るか。』

『…そうじゃの。』

仁王は、やれやれと立ち上がり彼女に手を差し出す。

『手をつなぐぐらい、いいじゃろ?』

『フン……腕組んでやるよ。』

そう言うと、仁王と腕を組みテニスコートに向かった。



『…お前、今までどこ…。』

跡部は頭ごなしに怒鳴ろうとしたが、目に異様な光景が入る。

『何だよ。腕組むのがそんなに珍しいか?』

クスクスと笑いながら、まるで恋人の様に仁王と腕を組み続ける。

『なんじゃ?俺がうらやましいか。』

仁王は跡部に挑発的な態度を取った。

『別に?』

と跡部はすぐにいつもの表情に戻り、仁王に言った。



(なんじゃい、もう少し張りあわんかい)

仁王は小さく舌打ちをした。



『試合終わったんだろ?私、先帰るな。』

そう言って仁王から離れ、”じゃあな”と校門へと向かっていく。

『…名前ぐらいおしえんしゃい。』

仁王は彼女の肩を掴み止めた。

だよ。仁王雅治君。』

じゃあなと言って走り去って行った。

な。』

仁王は柔らかく笑うとを見送った。




『…俺名前教えたっけ』

仁王は微かに悩んだ。
































『…………それ以来会っていない訳ですか。』

練習試合から数ヶ月。

休日さえ練習のある仁王は全く会えていない。




『…運命だと思うんじゃが。』

仁王は溜め息をついた。

『テニスを辞めない限り会えないんじゃ……』

”ないか”と柳生が言おうとしたその時だった。

『おい、仁王。お客だぜ。』

他のクラスメイトが”客だ”と廊下を指さした。

『客?誰…。』

廊下に出た仁王は目を丸くした。



『よ。わざわざ東京の氷帝学園から来てやったぞ。』

”ハロー”とニッコリ笑いながら手を振る。授業が暇だったので、立海に来たのだった。

『…?』

仁王が放ったセリフに柳生が近くに寄ってくる。

『…なぜここに??』

『暇だったから。』

とアッサリ柳生の質問に答える。

『学校サボる気ある?』

ないなら帰るが……あるなら遊ばないか?と悪い誘いをする。

『…別にいいが…。』

仁王は、あっけに取られつつも柳生に手を振り教室を後にした。







『…なぁ?なんで俺のとこに来たんじゃ?』

『決まってるだろ?お前にもう一度会いたかった。これで満足か?』

と仁王に告げる。

その言葉を聞いて目を丸くした仁王は、すぐさま笑った。

『光栄じゃの。』



『あ、お前彼女いる?嫉妬深いと後々被害を被るからな。』

”女の嫉妬ほど怖いモノはないかもしれない”と仁王に告げる。





『いや、いない』

仁王は“お前さんがいてくれたら幸せじゃ”と心で思った。

『なら良いさ。恋人がいないなら、遠慮なく遊べるな。』

さて、何処か案内してくれよと仁王に笑顔で命令する。


『んー…そうじゃのぉ』


仁王は軽く頭をかきながら悩んだ。

『何処でも構わないぞ。普段どこで遊んでいるんだ?』

お昼も食べたいし……と回りをキョロキョロ見回す

『普段はここじゃ』

と、仁王は近くのパン屋でパンを買い、公園に向かった。



『公園……ねぇ。一人で来てるのか?』

ふぅん……と言いながらベンチに向かって歩いていく。

『大抵一人じゃな。』


仁王はの後についていく。

はベンチに腰かけるが、仁王は芝生の上に寝転んだ。




『お前……寝転がるの好きなんだな。前に会った時も寝転がったし。』

ジローみたいだな。といってクスリ……と笑う。

『…そうじゃのぉ』

仁王は少しうとうとし始めた。

も寝ないか?気持ちいい…』

ゆっくりと目をつむる仁王。


『………寝ちゃったよ。私、暇じゃん。』

暇なら帰るかな……つまらないし。と寝ている仁王を見ながら考え込んでいた。

『…お前も寝んしゃい』

と、仁王はの腕を掴み器用に横に寝かせる。

『……なぁ、やっぱり寝るならベッドの上だろ?』

何で此処で寝るんだ?と仁王に質問をする。

『何言っとるんじゃ?』

いきなりしてどうする?と仁王は軽く苦笑いをした。



『…………お前とだったらして良いよ。』

ニヤリ……と笑いながら、は仁王の上に覆いかぶさる。

『…後悔するぞ』

仁王は慣れた手付きでの腰を触る。

































…その時。














『…とりあえず止まってもらえますか?』

声の方向に顔を向けると顔を真っ赤にさせた柳生が立っていた。


『……柳生比呂士か。紳士って呼ばれてるみたいだな。お前。』

やれやれ……邪魔するとはなかなかやるね。と言いながら仁王の上からどく。
そして、

『何しにきたんだ?』

と柳生に尋ねる。

『…副部長が仁王くんをご指名だったので、私が探しに。』

少し咳き込みながら柳生はに答えた。


『あぁ、真田弦一郎か。仁王、副部長がご指名だと。行ったら?』

クスクス……と笑う。

『…しょーがないの。、お前も一緒に来るか』

仁王は立ち上がり、に手を差し出す。



『良いのか?私、氷帝テニス部のマネージャーだぞ?』

それに、家に帰れなくなりそうなんだがな……と悩む。

『…なら仕方ないの。』

苦笑いをしながら“また来んしゃい”と言った。







『フン……また会えると良いがな。じゃあな。』

そう言って、東京まで帰って行った。








『…会えるじゃろ』

仁王は不敵に笑った。

まるで、また必ず会えると確信してるかのように・・・・。