「馬鹿じゃねぇの?」

先輩に、そう言われた。





























































〜勇気〜
































































次の日、俺は、跡部先輩に相談してみた。

誰かの助言が欲しかった。

それに、跡部先輩なら、真剣に考えてくれるだろうと思ったから。











「馬鹿・・・・・確かに・・馬鹿ですよね。」














俺は、苦笑するしかない。

確かに、馬鹿だ。

好きで好きで仕方がないのに、告白しなかった。

先輩と、後輩の関係のまま。

何も進展していないし、しようと行動も起こさなかったから。





















「告白しろよ。」











突然、跡部先輩が言った。





「告・・・・白?」








なんて、無理な事を言う人だろう。

先輩は、宍戸さんが好きで。

宍戸さんは、俺にとっては、尊敬する人で。

そんな人から、自分が好きだからって・・・奪えるはずがない。









「お前、無理でも言え。そんなんじゃ、いつまでも引きずる人生だ。

振られるのが、怖い?何だそれ。俺を見てみろよ。振られてばかりだっただろ?

時には諦めるのも良いかも知れねぇが、お前の場合は、諦めるのが早過ぎんだよ。命令だ。言え。」




「命令って・・・まぁ・・・・確かに。好きになった時点から、無理かなって思ってましたけど。」




そうだ。俺は、初めから諦めていたんだ。

ただ、遠くで見ているだけでも良いって。















でも、本当にそうなのか?

違う。そうじゃない。

そんなの、綺麗事じゃないか。
















宍戸さんは、いい人だけれど・・・・諦めきれない。


「告白・・・・しようかな。」




「そうだ。してこいよ。もしかした・・・・っと。いけねぇ。ま、頑張れよ。」



跡部先輩は、そう言って、さっさと屋上を後にした。


















(・・・・・・・・・・・・・・・・?)





















一体何が言いたかったんだろうか。

何だか、様子が可笑しかったけれど。






「ま、良いか。感謝しないとな。」











「馬鹿。何バラそうとしてんだよ。」


「悪かったって。だが、これで良いんだろ?」



跡部は、苦笑しながらも、自分の恋人に謝った。









「まぁね。の為だ。礼を言ってやる。」





は、偉そうにしながらも、跡部に礼を言った・・・・・・・・が。

世の中、そうそう巧くは事は運ばない。

そんな事で、跡部が納得するわけがないのだ。












「礼なんか、いらねぇから・・・行動で示して欲しいモンだな。」


「・・・・・・・・・・・明日は、学校は休みか。」








は、やれやれと肩を竦めたのだった・・・・。



























































先輩!!!!」

俺は、走った。

先輩の元に。


「長太郎・・・・どうしたの?」

「話し・・・・話があるんです。」

「話し?」

先輩は、首を傾げた。

まぁ、当然だろう。

俺から、話があるなんて、滅多になかったから。

俺は、廊下だと話しにくいので、空いている教室に先輩と向かった。










「・・・・・・で、話って?」

「あの・・・・本当に、宍戸先輩と付き合うんすか?」

何を聞いているんだろう。

付き合うのは、もう前に、先輩から聞いているのに。



「あ、あぁ・・・・・・まぁ・・・・。」

何だか、様子が変だ。

曖昧な、返事だ。

宍戸さんとの間に、何かあったのだろうか?

いや・・・そんなはずはない・・・と、思う。


「その・・・今更って思うんですけど。俺、どうしても言いたい事があって・・。」


体中が、震える。

怖い・・・・・だけど、これを乗り越えられないと、

俺は、これからもずっと駄目になってしまう気がする。




















「先輩が、好きです。宍戸さんじゃなくて、俺と付き合って下さい!!!」



言ってしまった。

とうとう、告白したんだ。


先輩の顔が怖くて見られない。

どんな顔をしているんだろうか。

俺の告白を、どう感じただろうか。

時間の流れが、遅い気がする。

どの位経ったのだろうか。

俺が、告白をしてから、長い沈黙だけが続いている。























「・・・・・名前で、言って貰いたかったな。」















ようやく、先輩が発した言葉がそれだった。


え?名前??

いや、それは告白の答えになっていないような気がする。



「だからね?告白位、名前で言った貰いたかったの!!!」

「え?は・・・・はい・・・・?????」


意味が分からない。

先輩は、何が言いたいのだろう。



「もう!!長太郎の馬鹿!!!」




「いや、馬鹿って・・・意味が分かりませんよ。」




「だからね・・・・・。」

先輩は、溜め息をつきながら俺に説明をしてくれた。





実は、宍戸さんと付き合うというのは、全くの嘘。

どうやら、ウジウジしている俺に痺れを切らした先輩が考えたらしい。

そして、跡部先輩も、ある意味仕掛け人。

俺が、告白するように仕掛けたから。


要するに、俺と先輩は両思いだった。

だけど、気になる点が一つ。




「何故、俺に告白してくれなかったんですか?」



「決まってるでしょ。長太郎から告白して欲しかったのよ。
いつもいつも・・・私の事を”先輩”としか呼んでくれないから、
告白位名前言ってくれるかな?って淡い期待を抱いてしまったからね。」












”それなのに・・・その結果がこれなんて・・・。”







と、また溜め息をついた。

「でも!!これからは、恋人同士なんだし、名前で言ってくれないと返事してあげない!!!」
「えぇ!それはないっすよ・・・・。」




今日からは、恋人同士。

何だか、照れくさいけれど・・・。やっぱり、嬉しい。








これから、どんな事が起こるかは分からないけれど。

泣かせる事は、したくない。












先輩・・・・・いや、

この先、ずっと二人で歩んでいきましょうね。

俺が、俺だけが貴女を幸せにしてあげられるって思ってくれるように努力しますから。





神様、これから先・・・俺達を見守っていて下さい。