神様。





私は、出会わない方が良かったのかもしれない。
































































私に触れないで


































































最近、何故か私の側には光さんが居ることが多くなってきた。





反対に、馨さんは私の側ではなく、一人でいる姿を度々見掛けるようになった。





二人が側にいないのは何だか可笑しいし、馨さんではなくて、付き合っていない光さんが私の側にいるのは、もっと可笑しく感じる。




私が、馨さんの方へ行こうとすると、必ず光さんに止められてしまう。





何故行ってはいけないのだろう。





愛しい人が、悩んでいるというのに。





こんな時こそ側に居てあげるのが筋なんじゃないのだろうか。




























「君が行ったって、何も解決しないよ。気が紛れるかも知れないけど、そんなの何の解決にもならないよ。」







考えていた私に、光さんがそう告げる。







「側にいるのが、邪魔だと仰るのですか?」





「そうじゃないよ。それは違う・・・・・違うけど・・・・。」







『違うんだ・・・・・でも・・・。』と呟き、光さんは下に視線を向けてしまった。





二人の間に、何があったか知らない。





言いたくないものを、無理に聞き出すつもりは更々ない。





言いたくなったら、どちらかが言い出すかもしれない。





言い出したくなければ、一生私は、分からないかもしれない。





でもそれならそれで、私は全く構わない。





人と仲良くやっていくには、ある一定の距離を保つ方が上手く行くこともあるのだから・・・・・。













































































はさ・・・・・馨といるのは幸せ?」





「え・・・・・・・。」





「だからさ、そんなに馨が良いの?大事?好き?愛してる?側に居たい?楽しい?幸せ?ねぇ、どうなのさ。」







俯いたまま、暫く黙っていた光さんが、私に問い掛けてきた。







馨さんが良い?







大事?







好き?







愛してる?







側に居たい?







楽しい?







幸せ?







そんなの、当たり前に決まっている。





そうでなければ、私は馨さんと付き合ったりしない。








































「・・・・・そんなに良いの?よりも、他の女といる方が長い馨が?」







そんなのは、聞きたくない。





そんなのは、既に解りきっているから。





だからこそ私は、見ないようにしていたし、考えない様にしていた。





でも、耳に入ってくる声は余りに残酷で。





私は、その言葉を聞くと、自分がどうにかなってしまいそうになる。







馨さんが良い?







大事?







好き?







愛してる?







側に居たい?







楽しい?







幸せ?







光さんの台詞が、脳内で何度も何度も繰り返される。





何度も何度も繰り返されている内に、何かが私に問い掛けてきた。






















(貴女、馨が良いんじゃないでしょう?)







違う。





















(貴女、馨が大事じゃないんでしょう。)







違う。





















(貴女、馨が好きじゃないんでしょう。)







違う、違う!





















(貴女、馨を愛してないんでしょう。)







違う、私は・・・・・・・。

























(貴女、馨から離れたいんでしょう。)







違う、私は馨さんの側に居たい。







































(本当かしら?良く考えてみなさいよ。大事にされていたのは、初めだけ。次第に貴女よりも、他の女と遊んでいる。
馨が、相手の女を好きじゃないにしろ、貴女は捨てられたも同然よ。好き?愛してる?傷付いているのに?悲しいのに?向こうは貴女を大事に思っているのかしら。)







そんな事、どうでもいい。





愛していなくたって、構わない。





愛して、信じて待っていれば馨さんは、戻ってきてくれる。





そう信じている。





そう信じていた。





そうやって、我慢してきた。





一体何時になったら報われるのだろう。





一体何時になればこの苦しみから解放されて幸せになれるのだろう。





私には分からない。





彼にすがり付けば、こっちを向いてもらえる?





そんな惨めな姿は見せたくない。





そんな姿を見せるくらいなら、黙ってただただ耐えているしかない。







我慢しろ。







泣くんじゃない。







恨むんじゃない。







憎むんじゃない。







ひたすら赦すしかない。







ただ、愛すしかない。







そうやって、頑張ってきた。







そんな私に・・・・・・・。





























































報われる日なんか、来そうにもない。



































































「僕だっ ら、 にそ な  はさせ いのに・・・・・・。」







自問自答していたその時に、光さんが何かを呟いた。





でも、何を言ったかは断片的で良くは聞き取れなかった。





彼は、何を言ったのだろう。





知りたい。





知りたくない。





聞きたい。





聞きたくない。





聞こえなかったということは、今はまだ知らなくて良いということ。





だから・・・・・私は聞き返すのをやめた。






































。お昼を食べに行かない?僕、お腹ペコペコなんだよね。」







先程の暗い声と表情とは全く違い、明るい声と表情をした光さんがそこにいた。





『早く行こうよ。座れなくなっちゃうよ。』と言って、私の手を握り歩き出す光さんに、思わず笑いが零れてしまう。







(・・・・・・本当だったら・・・・こういう事をするのは、馨さんとよね・・。)







光さんと、こんな事をしていいのだろうか。





これは馨さんを裏切る行為じゃないのだろうか。





それに、光さんに対しても、失礼だし迷惑なんじゃないだろうか。





そう考え事をしていた時に、視線を横に向けると、馨さんが女性と歩いている光景を目にした。





あぁ・・・・・・あんなに楽しそうにしているなんて・・・・。





今は考えないでおこう。





私は、何も見なかった。





忘れよう。





忘れれば、悲しさだって寄っては来ない。





そう心に決めた私は、馨さんから視線を外し、自分の手を握り少し前を歩く光さんの背中を見つめた。