「お前、何者なんだよ。」
Il est qui
「何者?貴様、私が怖くないと?」
「正直、怖い。けどよー・・・話してくれたって良いんじゃねぇか?」
そう、人間じゃないなら、一体何なんだ。
見た目は、俺と同じ人間。
それなのに、コイツは“人間じゃない”と言う。
「・・・・・・・・変な人間もいるものだな。普通だったら、直ぐに逃げるんだが。」
「だってよ、気になるんだから仕方ないだろぃ?」
新商品の菓子より、気になる。
そう、地面に散乱してしまったお菓子よりも。
教えてくれる気は、無いのだろうか?
俺としては、一秒も早く知りたい。
「秘密に出来るか?誰にも言わないと、約束できるか?」
「うーん・・・・・・あぁ、してやる。だから、教えてくれよ。」
「私は、ウ゛ァンパイアだ。」
「はぁ?!お、おいおい・・・・・本当かよ。だって、あれだろ?日光とか・・・駄目なんじゃねぇの?」
「それは、そういう説があると言うだけだろ?断定出来るものじゃない。」
俺は、夢でも見ているんだろうか。
それも、悪い夢。
かなり、悪すぎるぞ。
「良いか。言ったら、お前を殺すからな。ひ弱な人間を捻り潰す位、私にはたやすい事だから。」
俺は、黙って頷くしかなかった。
まだ先が長いのに、殺されてたまるか。
色々、食べたいお菓子だってあるんだ。
絶対に、死ねない。
「良い子だ。じゃあまた・・・・あぁ、そうだ。人間、名前は?」
「あ?俺??俺は、丸井ブン太ってんだ。」
「そうか。なかなか良い名前だな。覚えておいてやろう。」
そういうと、ウ゛ァンパイアの女は、立ち上がった。
もう用は済んだのだろうか?
いや、そもそも何しに地球に来たんだよ。
その辺は、教えてくれないんか?
「じゃあな。」
「あ!!ちょっ・・・!!!」
呼び止めた時には、遅過ぎた。
彼女の姿は、もう何処にもない。
「勝手な奴だなぁ・・・本当によ。」
(何処行ったんかなぁ。あの女。)
あれ以来、姿を現す気配が全くない。
またとか何とか言いながら、これかよ。
俺の名前を聞いておいて、名乗らないないなんて、狡過ぎる。
俺は、全く納得してねぇかんな。
「ブン太、転校生が来るんじゃってな。」
「あー?ふーん・・・・興味ねぇよ。」
転校生が、どうしたよ。
今、俺が興味あんのは、菓子とテニスとあの女。
他は、特に興味はねぇ。
「それがの、髪の色やら、瞳の色やら、凄いらしいぜよ。日本人じゃないとか?職員室に行った生徒が目撃したんじゃと。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと待て。
仁王は今、何て言った?
髪やら目の色が?
おいおい・・・・・・まさか・・・・まさか・・・・・・・・・・・・・!!!!
「おい、席に着け。」
「お、来たみたいやの。」
教室の出入口を見ると、担任の後ろから、転校生らしき姿が見えた。
「えー・・・・先ずは、転校生を紹介する。今日から、このクラスの一員になるさんだ。皆、仲良くするように。」
「です。どうぞ、宜しく。」
俺の予感は、バッチリ当たった。
当たりも当たり、大当り。
(聞いてねぇよ。この学校の生徒になるなんて!!あ、でも俺も聞かなかったしな。じゃなくて!良いのか!?)
「じゃあ、。君は、丸井の隣に座ってくれ。窓際の一番後ろにいる彼だ。」
「分かりました。」
担任、ふざけんなよ。
いや、何で俺の隣に、机が置いてあるかっていう答えにはなったけどよ。
ウ゛ァンパイアなんだぞ!その女は!!
「宜しく、丸井君。」
「ハ・・・ハハッ・・・・どうも。」
「退屈凌ぎになりそうだな。この生活は。」
女・・・・・・いや、は、小声で俺に呟いた。
(俺、これからどうなんだよ・・・・。)
出会った女は、ウ゛ァンパイア。
まさか、こんな形で再会なんて・・・・一体、誰が予想したよ?!
