「どうだ、調子は。」
永遠に_____。
あれから、少し日が経った。
が、記憶を無くした後でも、俺は、毎日彼女の病室を訪れている。
側にいない日は、ない。
も、徐々に体力を回復しつつある。だが、肝心の記憶はまだだ。
焦る事はない。
時間は、十分ある筈だから。
「もうすぐ、退院出来るってよ。良かったじゃねぇか。」
「はい。まぁ・・・・そうですね。」
の表情が、曇った。退院を、したくないのだろうか。
俺としては、早く退院して、色々な場所に連れていってやりたい気分なのに。
は、嫌なのだろうか。
記憶はないが、身体は覚えているのかも知れない。
あの家に、戻りたくない・・・・そう、脳が無意識に命令しているのだろうか。
「・・・・・・・夢のまた夢。」
は、景色を見ながら呟いた。
「私は・・・・・夢を見ている。私は、私じゃない。
今の私は、偽者で。架空の人物に等しくて、必要とされていない。
景吾、貴方だって、以前の私に戻ってくれる様に願っている。
そうですよね。一体私は、誰に必要とされるんでしょう。」
は、嘆いた。
”自分は、誰にも必要とされていない”と。
自分は、要らないのではないか。そう言いたいのか?。
本当に、そう思っているのか?
だとしたら・・・・・・・・。
「お前・・・・ふざけるなよ。」
「必要とされていないだと?何言ってんだよ。俺は、違う。
例えお前が、記憶を無くしていたとしても、俺にはお前が、必要なんだ。他の誰よりも、お前が必要だ。
だから、誰にも必要とされていないなんて、金輪際言うんじゃねぇぞ。分かったか。
言ったら、言った自分自身も傷付くし、そんな事を思っていない、お前を必要としている奴だって傷付くんだからな。」
俺が、そう言ったら、は、何も言わなかった。
言い返す事すら、しようとしなかった。
だが、以前のと比べてしまうのは、事実。
だとしても、は。
違う人物ではなく、同一人物。
俺が、愛している女には、変わりないんだ。
「何だ。やっと目が覚めたのか。」
聞き覚えのある、声。
俺が、嫌う声の主。
それは、の父親。
親とは言っても、本当の両親ではない。
俺は、この男が嫌いだ。
嫌いであり・・・・・・憎い。
「おっと。今日も来ていたのか。
君は、暇人なのか?余裕ぶっているのか?
余裕だな。跡部家の御子息は。」
「どうも・・・・・。」
話をしたくない。コイツとは。顔も、見たくなかったのに。
一体、何しに来たのだろうか。
「、帰るぞ。支度をしろ。」
何を言い出すのか。この男は。
帰る・・・・・だと?
まだ、医師は退院して良いと言っていないのに。
なのに、何故帰ると言い出すんだ?
「目覚めた。そして、回復したんだ。
もうこの場所に居る意味がないだろう?
それならば、こんな場所でグダグダしていても仕方ないだろう。ほら、服だ。着ろ。」
そう言うと、男は、に服を投げる。
俺は、この男が、何だか焦っている様に見えた。
表情は、以前会った時と変わらないが、何かが違う。
何か・・・・あったな。
これは、調べさせる価値があるかもしれない。
目の前にいるこの男にも、弱点があると、俺は、感じた。