君がね。
さぁ、
夢を、見る事がなくなった。
どんなにどんなにどんなに眠っても、見る事が不可能になってしまった。
俺は、一体どうしたというのだろうか。
これは、可笑しくなったという事か?
いくら可笑しくなっていないと思っても、全く夢を見ないというのは可笑しいじゃないか。
(何なんだよ・・・・逆効果か?いや、あの夢を見ていた時と状況は変わらないに等しい。)
夢を見るから、眠れない。
夢を見ないから、眠れない。
差があるとしたら、夢を見るか見ないかの差だ。
「・・・・・・・・・・・ふぅ。」
どうにかしてくれ。
俺が、何をしたっていうんだよ。
分からない。
分からないから、苛立ちを隠せない。
それ相応の事をしたのなら、喜んで受け入れる。
だが、そんな覚えはない。
誰か、どうにかしてくれ。
頭が、可笑しくなりそうだ・・・・・。
「だいぶ、参っているみたいだね。」
「か・・・・お前、何か知ってんだろ?教えろよ。」
「駄目。駄目だよ、跡部君。私には、教えられない。教えたら、大変なの。」
「大変って・・・・・何が大変なんだよ。」
「それも教えられない。」
は、俺に“御免”と謝ると、何処かへ歩き出してしまった。
言ったら、大変な事になる・・・・ってどういう意味だ?
俺がこうなった理由を、は知っている。
だが、もし理由を言ってしまったら、は大変な目に合うんだろう。
それが一体、何なのかは分からないが・・・・・な・・・。
(やっぱ、自分しかいないな・・・・自分を助けるのは。)
他人を頼ってはいけない・・・・ねぇ・・・・。
親父は、そう言っていたな。
一度も、ないんだろうか。
そんなに、頼るのはいけない事なのか?
“ねぇ、跡部君。”
“茨って、知ってる?”
気掛かりだ。
が、言っていた言葉。
もしかしたら、手掛かりになるんだろうか。
「キーワードは・・・・“茨”かもな。」
夢の中に、出て来た女。
そして、奪われた夢。
キーワードは・・・・・“茨”

