「付き合ってやるよ。」
知らないから
どうでも、良かった。
こんな女に、興味はない。
そんなモノ、沸き上がってきやしない。
だが、付き合ってやる。
そうすれば、近付けるだろうから。
善は急げ・・・・・だろ?
行動を起こさなければ、何も始まらない。
向こうからやって来なければ、俺から行く。
それだけの事だ。
「ほ、本当に?!」
「あぁ。」
馬鹿な女だ。
俺は、何とも想っていないのに。
自分の事を、好きだと思っていやがる。
おめでたいな。
本当、
どうやったらそういう答えに辿り着くんだか。
「じゃ、じゃあ・・・・今日から“景吾”って呼んでいい?」
「・・・・・・あぁ。」
ふざけるな・・・・と言いたい所だが、赦しておいてやるか。
暫くの辛抱だ。
その路を通過してしまえば、要はねぇ。
「・・・・・・今、何て?」
「だからね?付き合ってくれるって!!」
とても、嬉しそうだった。
それとは反対に、私は不安になった。
今の今まで、跡部景吾は何も言ってこなかった。
それなのに、急過ぎないだろうか。
(何か・・・・ある・・・?)
否、これは考えるべきじゃない。
この子が良ければ、私が何かを言う資格は無い。
それで良ければ、それで良い。
願いが叶ったのだから。
「おめでとう。」
たった、一言。
それだけを言って、私は教室を出た。
“何かあったら、私に言いなさい”
この台詞は、言えなかった。
出かかっても、言葉にするのは止めた。
余計な、お世話。
そして、幸せな彼女を傷付けてしまうかも知れないから。
(さて・・・・と。)
私は、屋上に向かった。
授業は、始まろうとしている。
それでも、構わない。
今日は、一時間だけ休ませて貰おう。
「これで・・・・大丈夫。」
屋上に着いた私は、携帯を取り出す。
恋人である、比呂士に報告をする為に。
彼は、授業に出ているだろう。
真面目な人だから。
曲がったことは、嫌い・・・・なのかも知れない。
気が付くのは、休み時間。
それも、良いだろう。
報告する事に、意味があるから。
“無事に、不安は解消。”
本文には、それだけ。
短いけれど、彼なら分かる筈。
(いい天気。明日も、晴れるかしらね。)
明日は、久し振りの休日。
比呂士と、二人で長く居られる時間。
私は、願った。
明日も、晴れるように・・・・・と。