それは、不思議な不思議な出会い。
全ては、これから始まったんじゃないかと感じている。
春
春。桜が満開で、綺麗だった。
俺は、真田達と、街を歩いていた。
たわいない話しをしながら、ゆっくりと歩く。
周りは、皆、楽しそうにしている。
(何が、楽しいんじゃろうなぁ。毎日毎日、同じじゃけぇ。)
そう、代わり映えない。この日常。
歳を重ねて・・・・四季が変わる位だろう。
他に、何が変わる?
何か、あるのだろうか。変わるモノが。
俺には、分からない。
これからだって、真田達との関係は、変わらないだろう。
ずっと、こんな風にいるに違いない。
「ね、あれ見てくださいよ。可愛い二人がいるっすよ。」
赤也が、前方を指差す。
その先を見てみると、女が二人。
どんな話しをしているのか、かなり楽しそうな表情をしている。
二人とも、なかなか良い感じだが・・・・俺は、髪が長い女の方が気になった。
「あの髪の長い女性、良いですね・・・・。」
柳生が、ポツリと呟いた。
その瞬間、胸が高鳴る。
コイツ・・・・・狙ってるんじゃないか。
そうなると、ダブルスの仲が悪くなる事は、確実。
それはそれで、マズイ。
「話し掛けてみたらどうじゃ?」
俺は、ずっと見つめたままの柳生に提案する。
柳生は、絶対に行かない。そういう自信があった。
「えぇ、話し掛けてみるつもりです。
仁王君は、話し掛けるつもりはないですよね。」
柳生の意外な答と、鋭く俺を射抜く瞳に、俺は驚いた。
冗談で、言ったはずなのに。
柳生は、見ず知らずの女に、話し掛けると言うのか?
嘘だろ?柳生は、こんな奴だっただろうか。
少なくとも、俺の知っている柳生じゃない。
じゃあ、コイツは誰だ?
「おっ、柳生先輩スゲェ。話し掛けてる。」
我に返り、柳生を見ると・・・・話し掛けていた。
俺が、見つめていたあの子に。
マズイ・・・・・・。
そう思った瞬間、俺の身体は、動き出していた。
柳生と・・・・・彼女が話しているあの場所に。