それは、不思議な不思議な出会い。
全ては、これから始まったんじゃないかと感じている。
春
驚いた。彼女の髪の色は、紫だった。
日本人ならば、染めなくてはいけないだろう。
あんなに目を引く髪の色。
世の中に、あんな色をしている者がいたのだろうか。
美しい____。
本当に、そう思った。
これは、嘘なんかじゃない。彼女の髪は、美しい。
触れてみたい。
そんな事を考えてしまう。
そんな自分が居たことに驚き、信じられない気持ちでいっぱいになった。
(話し掛けてみたい。しかしな・・・俺は、あの二人みたいに、積極的にはいけない。)
あんな風に、異性と話せる人間が、少なからず羨ましく感じる。
俺は、どうやってもあんな風にはなれない。
「ねぇ、名前は?」
女の声がした。
空耳かと思ったが、下に視線を向けると何やら影が・・・。
「どうも。初めまして。」
「!!!!!!!」
何故、俺の目の前に、彼女がいる?
いや、ついさっき・・・向こうにいたじゃないか。
全く、気付かなかった。
気配すら、感じ取れなかった。
こんな事が、あるのだろうか。
「私、って言うの。貴方の名前は?」
彼女は、微笑みながら、俺に話し掛けてきた。
。
彼女の名前か・・・・。
俺は、忘れないように、しっかりと記憶する。
彼女の名前を。そして、彼女の、微笑みを。
「で、貴方の名前は?聞かせて欲しいと思っているんだけれど。答えは、どうかな?」
「あ、あぁ・・・・・済まない。俺の名前は、真田弦一郎だ。」
「ふぅん・・・・・真田・・君。良い名前じゃない。弦一郎って、なんか凄く良い!!」
そうなんだろうか。
初めて、言われた。両親以外の人間に。
“凄く良い”
そう言われて、何だか嬉しくなる。
彼女の名前だって、素敵だ。
しかし、上手く言葉が出てこない。
どう言って良いのか、俺には、分からない。
こんな時、周りの奴は、何て言うのだろうか。
きっと、思った事を、口にするのだろう。
羨ましい。本当に。
今、話す事を慣れていない自分が嫌になった。
悔やんでも、仕方がないと思いながらも、悔やんでしまう。
しかし、何か一言・・・・・。
一言くらい、言えたって。
俺が、彼女を見て、何か言おうとした時だった。
「・・・・・・・いない。」
彼女。は、消えていた。
俺の、目の前から。
そして、この場所から。
一体、何処に行ったのだろうか?
俺は、伝えたい言葉があったのに・・・・。
仕方がない。
また、会える事を願いながら、待とう。
それまでは、口にはしない。
俺は、そう誓った。