それは、不思議な不思議な出会い。
全ては、これから始まったんじゃないかと感じている。
春
街。
いつも、俺がいる街。
それは、変わる事はない風景。変わるとしたら、季節毎の景色。
春、桜が満開になり、綺麗な桜色が、街を彩り、支配する。
「ん〜・・・・・桜は、良いねぇ。」
俺は、公園に咲いている桜を見上げる。
綺麗。本当に。
感嘆の溜め息が、自然と出てくる。
ふと、何か………人の気配を隣に感じた。
俺は、左側の方に、視線だけを向けてみる。顔の向きは、変えずに。
すると、そこには、一人の女の子が立っていた。
俺と同じ様に、桜を見つめている。
その娘の顔を確認すると、俺は、顔を向けた。
驚いた。
桜よりも、綺麗な子。初めて、こんな子を見た。
俺の、周りにいるような女の子とは違う。
愛おしそうに、桜を見つめるその姿。
俺は、ついつい見とれてしまう。桜ではなく、それを見つめている女の子に。
儚く、抱き締めれば、折れてしまいそう。
でも、抱き締めてみたい。これも、好奇心なのだろうか。
「桜・・・・好きですか?」
突然、話し掛けられた。
本当に突然だったから、咆驚してしまった。
きっと、俺は間抜けな顔をしているだろう。
そう考えると、凄く恥ずかしくなった。
「桜は、お嫌いですか?」
今度は、少し悲しそうな表情になってしまった。
俺は、否定するように、顔を左右に大きく降る。すると彼女は、また嬉しそうな笑顔に戻った。
その表情に戻った事を確認できた俺は、何故かホッとした。
今は、驚きの余り、声がでない。
まさか、彼女の方から話し掛けてきてくれるとは思わなかったから。
「へぇ、ちゃんて言うのか。」
あの後、何とか声が出るようになった俺は、彼女をお茶に誘った。返事は勿論、良い返事。
で、現在は、自己紹介をしていた所。
彼女の名前は、ちゃん。
どうやら、有名なお嬢様学校の一年生らしい。
お嬢様か・・・・でも、雰囲気がそんな感じ。
だから、周りにいる子とは違う様な気がしたのかな?
でも、やっぱり違う。気のせいじゃないと思う。
俺は、直感を信じる。まぁ、占いとかも結構信じるけどさ。
「千石さんは・・・お花はお好きですか?」
「花・・・・・花かぁ。俺、花って、名前とかよく分からないんだよね。
けど、桜は好きかな?あの華やかな感じとか、散っていく時も、華やかで良いじゃない?
咲いても散っても、感動させてくれるよ。桜はさ。」
そう、桜ってなんか良い。
俺は、そう思う。
散っていくのは、確かに悲しい感情が湧き出てくるけれど、同時に”綺麗だ”と思わせてくれる。それが、好きなんだ。
「そうですか。お花は・・・良いと思います。
落ち着きますし、幸せな気分にさせてくれます。
嫌な事も、忘れさせてくれる・・・そんな感じですね。」
ちゃんが話す時は、何だか心地良い気分になる。子守唄を唄っている様な感じ。
夢の中に誘われている気分。こんな事ってあるんだろうか。
「ただ・・・・寿命がありますよね。
それは、私達、人間にもありますが、花にも寿命があります。
命は、いつかは尽きる。悲しい・・ですよね。」
その時のちゃんは、今すぐにでも消えてしまいそうで、怖かった。
まるで、そこに存在が無かったかの様に。
それが、俺と彼女の出会い。
この先、どうなってしまうのだろう・・・・。
それは、俺には、分からない。