それは、不思議な不思議な出会い。
全ては、これから始まったんじゃないかと感じている。
春
俺は、テニスをしていた。
いつもと変わらず、テニスをする毎日。
これは、変わらない。変わる事は、ない。
怪我の治療の為に、一時、テニスから離れた事があった。
早く治ることを願いながら、過ぎていく日々。
辛かった。
しかし、弱音を吐く事は、許されない。
俺は、そんな事をしたくないんだ。
(やはり、テニスは良い・・・・・。)
心の底から、そう感じる。
テニスは、良い。
小さい頃から、テニスをやってきた。
テニスは、俺の人生そのものの様に感じる。
テニスがなかったら、俺は、一体何をやっていただろう。
そんな風に、考えて、思考を巡らせるが、答えは、浮かんでこなかった。
「貴方、テニスが好きなの?」
突然、背後から、声が聞こえた。
急な事だったから、驚いた。
周りには、誰もいなかった筈なのに。
一体、何時からそこにいたのだろうか。
それにしても、髪と瞳の色は、一際立っている。
一番初めに、視線が行ってしまう。
地毛・・・・なのだろうか。
しかし、あんな色になるのか?
有り得ない。
だが、それが事実だとすれば、有り得ないとは言えない。
「これは、地毛。染めた訳じゃないの。産まれた時から。
この世に、生を受け、“”と名付けられる前から、この色だった。」
彼女は、自分の髪に、愛おしそうに触れながら言った。
しかし、俺は、何も言っていない。
髪の事さえ、口にしていない。
なのに、何故分かったのだろうか。
「何故、髪の事を聞きたそうだと思ったんだ?」
「勘・・・・って言っても、駄目かな?納得してくれない?」
彼女は、笑顔を浮かべまま、俺に尋ねてくる。
「いや、納得したから良い。」
「そう。で、私の質問には答えていないよね。テニスは、好き?」
「あぁ。好き嫌いで問われれば、好きだ。そうでなければ、此処まで続いていないだろう。」
「そう。好きか・・・・・。」
そう言った彼女の表情は、何故か哀しそうだった。
何か、傷付ける事を言っただろうか。
否、そんな事はないだろう。
「ねぇ、見ていても構わない?」
彼女は、そう言って、俺の練習を、見つめていた。
しかし、夕方。
帰ったのだろうか。
彼女の姿は、何処にも見当たらなかった。