五月、緑が茂るあの日、僕等は再会を果たす。
春
桜の花も散り、緑が茂り始めた。
四月の初め。
あれ以来、彼女には会っていない。
一体何処に行ったのか。
会いたくて仕方がないのに。
テニスにも、集中が出来なくなってきている。
これは、よくない。
好ましいとは、思わない。
(ヤベェな・・・。だが、彼女は、会う約束をしてくれた。俺は、待つしかない。)
何日、何週間・・・こうやって、自分に言い聞かせてきたんだろうか。
会いたい。会いたくて、仕方が無い。
たった、一度。
あの一時を、彼女と過ごしただけなのに。
どうかしている。
こんな自分。
「何や、跡部。最近やる気ないみたいやな。」
「忍足か・・・そういうお前こそ、最近やる気全くねぇじゃねぇか。」
「まぁな。どうも調子がでぇへんねん。」
二人して、こんな調子か・・・。
撫樣だな。
俺は、苦笑してしまう。
こんなに調子が狂うのは、初めてだった。
「良くないな。仕方ねぇ、捜しに行くしかねぇか・・・・。」
しかし、捜すと言った所で、何処に行けば良いのか・・・。
待ち合わせすら、していない。
場所の指定なんか、以っての外だ。
取り敢えず、初めて会った場所に行ってみるしかないか。
それ以外を捜しても、全くの無意味だろうしな。
「やっぱり、いねぇか・・・・・。」
出会った場所に、到着した俺は、辺りを見回した。
しかし、らしき人物は、見当たらない。
やはり、無駄足だったのだろうか。
「は、居ないわよ。」
いつの間にか、一人の女が、華が散ってしまった、桜の木の下にいた。
「・・・・・・どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。は、此処には来ない。待っているだけ、無駄な事。諦めて帰った方が良いんじゃないかな?」
彼女は、可笑しそうに、クスクスと笑う。
よく見ると、によく似ている気がする。
もしかして、の姉か?
確かに、似ている。
見れば見るほど、にそっくりだ。
「とにかく、はいない_____。」
「おい、ちょっ・・・・・。」
驚いた。
彼女は、一体何処へ行ってしまったのか。
残された俺は、ただ桜の木を見つめる事しか出来なかった。
