五月、緑が茂るあの日、僕等は再会を果たす。
春
彼女と出会ったのは、病院の帰り道。
それが、初めてだった。
あれ以来、会っていない。
彼女は、一体どんな悩みを抱えているのだろう。
そして、何者なのだろうか。
俺は、知りたかった。
突然、消えてしまった訳は・・・・・何?
「・・・・・・・あれは。」
俺は、彼女らしき人影を見つけた。
もしかしたら、彼女かも知れない。
慌てて、彼女に駆け寄る。
心臓が、速く脈打っているのが良く分かる。
違うかも知れない。
けれど、あの時出会った・・・彼女だと思いたい。
「やっぱり・・・・・君だ。」
俺は、間違っていなかったんだ。
俺が会いたかった、人で間違いなかった。
あぁ、この喜びをどう表現したらいい?
抱き締めたい衝動に駆られる。
けれど、拒まれてしまったらどうしようかという気持ちが強い。
「・・・・・御免。どなたですか?以前、私か妹に会った?何処かで見た気がするけど、思い出せ無い。」
彼女の視線は、定まっていなかった。
何処か、遠くを見つめていて・・・此処には居ない存在を見つめていた。
一体、何を見つめているのだろうか。
気になって、仕方がない。
「・・・・・・思い出した。以前、ぶつかった人だったかな?」
ふと、彼女を見ると、以前の表情に戻っていた。
全く、何もなかったかのように。
その時間だけ、切り取られてしまったかのように。
「もう、桜は完全に散ってしまったみたいだね。」
「そうだね。散ってしまった。また、来年見られるさ。」
「来年・・・・・ね。」
俺は、彼女を喜ばせる事が出来ないのだろうか。
初めて出会った時から、彼女を・・・・さんを、悲しませる様なことしかしていない気がする。
「来年、あると良いね。あると・・・・・。」
「泣かないで・・・。あるさ、きっと。」
俺は、声を上げずに泣いている彼女を、泣き止むまで抱き締めていた。
