五月、緑が茂るあの日、僕等は再会を果たす。
春
あれ以来、柳生とは息が合わなくなってきた。
ダブルスの練習にもなりはしない。
「お前達、一体どうしたんだ?最近、様子が可笑しいぞ。」
「何でもなか。調子が悪いだけじゃ。」
同じ台詞を、何度言っただろうか。
口にして、何度自分に言い聞かせたのだろうか。
ずっと、この調子のままで良い筈はない。
どうにかしなければならない。
そう思っても、彼女の事を想うと・・・・出来なくなってしまう。
。
彼女は、とても綺麗だった。
あの日以来、忽然と姿を消してしまった。
俺の心を奪ってしまった彼女。
に、どうしても会いたかった。
再会したい。
だが、一体再会出来る場所は、何処なんだ?
全く分からない。
見当すら、つかない。
(やれやれ・・・・・先は分からんのぅ。)
知らず知らずの内に、溜め息の数は増えていく。
溜め息をつくと、幸せは逃げていくというが、俺は一体どの位逃げてしまっているのだろうか。
「・・・・・・・仁王君。練習をしましょうか。」
「柳生・・・・。」
久々に話した気がする。
だが、以前の様にはいかない。
これは、どうやっても解決はしないだろう。
「そんな表情をしないで頂きたい。今は、ダブルスのパートナーとして接しますよ。彼女の事は、また別として考えます。」
「フン。そうか。」
全く、好き勝手言ってくれるな。
コイツ、一体何を考えているんだか。
紳士は、こんな奴だったか?
「そういえば、幸村って最近誰かと会ってるとか噂があるけど、本当か?」
「は?幸村が?」
これは、初耳だった。
幸村が、女と会っている?
一体どんな女なのだろうか。
ジャッカルの話によると、どうやら日本人ではないとか・・・・。
この学校の生徒が、どうやら目撃したらしい。
「幸村にねぇ・・・・・。」
“日本人じゃない”
その台詞の部分が、突っ掛かる。
どうしてだろうか。
まさか・・・・いや、そんな筈はない。
幸村は、彼女を知らない。
一度も会っていない。
「・・・・・・ん?」
突然、俺の携帯がけたたましく音を出し、存在を出張し始めた。
(誰じゃ・・・・知らない番号・・・無視するべきか?)
画面には、名前が表示されていなかった。
悪戯電話かもしれない。
または、変な女が俺の番号を知って掛けてきたのかもしれない。
俺は、電話には出なかった。
出る必要なんか、ないと思ったからだ。
(なんじゃ?今度は、メールか。)
知らないアドレス。
電話をしてきた人物と、同一人物か?
俺としては、いい迷惑だ。
「仕方ないの・・・・・。」
俺は、受信したメールを開いてみる事にした。
「・・・・・・・・・?」
内容は、至ってシンプル。
“姉と二人で、学校に来ている”
との事だった。
来ている?が?
立海に、来ているというのだろうか。
こうしてはいられない。
俺は、慌てて部室を出ていく。
に、会えるんだ。
ずっと、会いたかった彼女に。
「仁王さん。」
は、確かにいた。
テニスコートの出入口に。
確かに、の姉も一緒に立っていた。
俺の会いたかった彼女が、目の前に立っている。
さぁ、何から話しをしようか。
俺は、の手を握った。
