悲しそうだった、彼女。
ねぇ、君は誰?
知らない、あの娘
「なかなか見つかりませんね。」
全てのクラスを見るのは、かなり大変な事だった。
時間が、刻々と過ぎていく。
あの日会った彼女は、まだ見つかっていない。
俺も、お手上げ状態な感じ。
一体、何処に行ってしまったのか。
必ず、この学校にはいる筈。
それなのに、一向に見つかる気配がない。
「仕方ない。部活に行くか、紳士。」
「そうですね。っというか・・・紳士と言うの、やめてくれませんか?」
「嫌じゃ。」
「・・・・・・はぁ。」
「仁王、さっきから溜め息ばかりだね。やる気・・・ないのかな?」
溜息をついている俺の目の前に、にこやかな笑顔を浮かべている幸村がやってきた。
俺は、どうも幸村が苦手だ。
あの笑顔の裏には、一体何があるのだろうか。
探ってやろうと思っても、なかなか本性を表そうとはしない。
だから、俺は苦手なんだ。
「仁王、もうすぐ大会なんだから・・・・集中してもらわないと困るな。」
「はいはい。やれば良いんじゃろ。やれば。」
仕方ない。
少しの間だけでも、練習に集中するしかなさそうだ。
集中すれば、煩く言う奴もこれ以上出てこないだろう。
「あ・・・・・・・。」
練習をしようかと思った矢先だった。
俺は、屋上に人影を発見した。
(まさか・・・・・。)
「仁王!!何処に行くんだ!!!」
怒鳴られても、止まる事は出来なかった。
あれは・・・・あの人影は・・・・・。
そう思うと、足は止まってくれない。
きっと、戻って来たらこっぴどく叱られるのだろう。
だが、優先すべき事は、屋上に向かう事だったんだ。