「俺が・・・・俺が、いるじゃろ?」































































知らない、あの子






















































彼は、そう言った。



















両親にも、学校にも、周りの人さえも、私を見捨てたのに。



















こんな私に、どうして良くしてくれるのだろう。



どうして、そんなに温かいのだろう。
















私は、冷たい。



周りに言われなくても、自分で分かっている。



氷の様に・・・・冷たく、凍ってしまった心。



それを、溶かす様な人なんかいないと思っていた。






















・・・それを、離しんしゃい。」














「駄目・・・離せない。」














このナイフは、私自身。



絶対に、手放してならないモノ。



私は、離さない。



目の前には、主犯が・・・黒幕がいる。



何をされるか、分からない。



















自己防衛手段。



自分で自分を守らなければ、誰も助けてなんてくれないから。




















































だから・・・・あの時だって・・・・。

























































あの時だって、自分で自分を守ろうとしただけ。










































































「仁王先輩、そんな子放っておけば良いじゃないですか。」










「そうですよ。そんな女、いなくたって変わらないんだから。」









クスクスと、笑う。



あの笑い・・・・・私は、好きじゃない。



何時も何時も、聞いて来た。









私が、泣き叫んでも。




どんなに、助けを求めても。




誰も、助けてくれなかった。




皆、一緒になって笑っていた。




どうせ・・・・一人だと、何も出来ない癖に。




大人数だから、優越感に浸る。
















あぁ、馬鹿みたい。



本当に、馬鹿みたい。



そんなモノ。



一人では、絶対に何もしない。

















愚かだ。














可哀相な、下等生物・・・・・。



私も、その生き物の一人。



それが、嫌だった。




だから・・・・・ね・・。




























































「・・・・・・うっさい女じゃのぉ。」






























































「俺、お前等みたいな女が大嫌いだ。ウザイ。本当に、ウザイ。」





























































「他人に死ねって言うなら、お前等・・・・死ねる?」
























































「人は傷付けて・・・・自分は、傷付きたくない・・・・ってのは、可笑しいじゃろ?」

































































笑っていなかった。



全く、笑おうとしていなかった。



何時もの、先輩じゃない。



怒って・・・・いるんじゃないかって。



私は、そう感じた。



























































「まぁ・・・・そうだよな。所詮は、他人事だもんな。分からないよな。だけど・・・・自分が、同じ立場になったら、助け求めるんだろうな。

泣くんだろう?どうして、自分だけ・・・・・って。皆、どうして助けてくれないのか・・・・ってな。人間って、そんなもんじゃ。実に、醜い生き物だと思わん?」






























































腕を、掴まれた。



私の持っていた刃物は、すぐに奪われてしまった。



仁王先輩は、私の腕を掴んだまま、走り出した。












泣きたくなってきた。



最近、泣く事なんかなかったのに。



私の中で、何かが変わって来たのかもしれない。










































「仁王先輩・・・・・。」










































仁王先輩、私は生きたい。



たった一人でも、私を必要としてくれているなら。



それは、生きる糧になるから。



貴方が、必要としてくれるなら・・・・・。



私は、仁王先輩の為に生きたい。



今まで、良い事がなかった私。
































































「俺の為に・・・・生きて・・・・って、何か我が儘というか、自分勝手な感じじゃな。」





















































先輩は、苦笑いをしながら言った。



以前の私なら、何も感じなかった。



感じるとしたら、嫌悪感。



















































けれど、今の私は・・・・・・。


























































「私は、仁王先輩が必要としてくれる限り、生きられる・・・。」




























































きちんと、笑えただろうか。



多少不安だったけど。



仁王先輩が、笑ってくれたから、大丈夫だったと思う。