こいつは、何を言っているのだろうか。
付き合いましょう
考えられない。
可笑しい奴だと思った。
仁王雅治。
クラスは違うが、同い年。
立海の中でも、かなりの人気があるのだろう。
けれど、私は友人としてしか見ていない。
色々な女と、会っているらしい。
噂によると、特定の女はいないとか。
まぁ、噂は噂であって、真相でないから、信じる必要はないだろう。
だが、本人に聞けば、いると言っていた。
それなのに、何故私と付き合おうとするのか。
私は、そんな軽い人間じゃ無いし、安くもない。
付き合いたいならば、本気になってから来いと言ってやりたい。
「あぁ・・・・断ったんだ。そうだよね。確かに、断るよね。」
「当然。女がいるのに、遊びの女にされてたまるか。
確かに、血液型は良かった。だが、そういうのは好きじゃない。」
そう。好きじゃないんだ。
軽い気持ちなんて、嫌だ。
遊ばれている人間の気持ちなんか、お構い無しなんだろうな。
いや、まぁ・・・・どうしてそうなのか理由は聞いていないが。
原因があるのか?
昔、女に遊ばれたからとか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、何を考えているんだ。
どうでも良いじゃないか。
それよりも、自分の相手を捜すべきなんじゃないだろうか。
そうだ。捜さなければ。
良い男には、女がいるって聞くから、早目に捜さなければならない。
周りの女に盗られる前に。
この学校で捜すのに無理があるのか?
もう少し、視野を広げるべきだろうか。
ふと、廊下の窓から、テニスコートが見えた。
(ふぅん・・・やけに真剣じゃないな。)
仁王は、丸井としゃがみ込んで話しをしているみたいだった。
天下のテニス部も、こんなモノか。
まぁ、私には関係ない。
今日は、図書館に行こうと思う。
一人になれるから、一人だけの空間が出来るから。
「!!」
突然、名前を呼ばれた。
この声は、仁王だろう。
私は、歩むのを止め、振り返る。
「何だ。仁王・・・・お前、部活はどうした。」
仁王は、息を切らせていた。
一体、何をそんなに慌てているのか。
「俺と、付き合わんか?」
何を言い出すのか。
この男は、頭が可笑しくなったのか?
私は、言った筈なのに。
それとも、よく聞こえていなかったのだろうか。
「断る。」
私は、午前中に言った事をもう一度言った。
奴の瞳を見つめたまま。
すると、仁王は、私に向かってこう言った。
「なぁ、他に女なんか作らない。遊びもしない。俺は、お前だけを見る。
約束する。大切にするから。泣かせたりもしない。傷付ける事も。幸せな気分にさせる。
自信があるかどうか・・・それは、付き合ってみなければ分からない。後悔は、させないから。だから・・・だから、俺と付き合って・・・・。」
信じられない。
本当に、信じられない。
恋人がいるのに。
他に女を作る気でいるのか?
訳が分からない。
「何故?なぁ、どうして付き合わないといけないんだよ。」
「そ、それは・・・・。」
仁王は、言葉に詰まってしまったみたいで、少し俯き加減になる。
仁王の答えは、何なのか知りたかった。
すると、仁王は顔を上げて私に言った。
「お前が・・・・が好きなんじゃ!!!」
何て言った?
私が、好きだと言ったのか?
何だと・・・・・・・。
「お前・・・・・ふざけんなよ!!女を馬鹿にしているのか?どうなんだよ!私は、遊びで付き合う気はない!!」
「遊びじゃなか!!!今、分かった。俺は、お前が好きなんじゃ!!あぁ、確かに遊んでいた!じゃが、もうやらん!」
「じゃあ、今すぐに清算して来いよ。それ位簡単だろう?出来るよなぁ?」
まるで、売り言葉に買い言葉だ。
しかし、仁王は女の扱いに長けている筈だ。
見極めないと、後々大変な事になる。
「上等じゃ・・・・・来いよ。」
仁王は、そう言って、歩き出した。
私の手を掴んだまま。
