私は、彼から逃げたかった。逃げなければ、ならない理由が出来てしまったから。
今日、この日、この場
所で。
逃げたかった。彼の前から。
消えてしまいたかった、どうしても。
清純は、悪くない。悪いのは、私。彼から、逃げたくなった、私。
私は、弱い。
”人間は、弱い。”以前、誰かにそう言われた。
確かに、その通りかもしれない。
清純に会うまでは、そんな事を考えた事も、思った事も、信じた事もなかった。
だけど私は、彼に出会ってから、変わってしまった。
あの出会いが悪かった訳じゃない。寧ろ、嬉しかった。私は、幸せだった。
けれど、さようならを言わせて。清純。
人は、”何故?”と、私に問うだろう。けれど、私は答えない。
清純。貴方も、必ず理由を知りたがるでしょう。
でも、私は絶対に言わない。大切な、貴方でさえも、知られたくない。
最後のデート。私は、どうも落ち着かなかった。
清純も、気付いていたかもしれない。
だって、私は、彼の話しをよく聞いていなかったから。
清純を、見ようともしなかった。
「別れて。理由は・・・言えないけど。」
なんて、卑怯なんだろうか。理由が言えないなんて。言おうともしない。
私は、最低な人間だ。
清純は、”何故?どうして?”と聞いてくる。けれど、私は答えたくない。
ダカラ、ナニモイワズニ、ワタシハ、アノバショカラ
ハシリサッタ・・・・。
あれからというもの、清純は、私を捜しているらしい。
___サガシテモ、ムダナノニ。
毎日、毎日、清純は、私にメールを送ってくる。
___ワタシハ、アナタニアイタイトハ、オモワナイノ。
返信がない、一方通行のメール。
毎日がそれなのに、清純は、諦めないかの様に送ってくる。
ねぇ、お願いだから、もう止めてほしい。
これでは、折角の決心が鈍ってしまう。
私だって、会いたいに決まってる。
だけど、会えない。矛盾している、この感情。どうする事も、出来やしない。
私、私はね?別に嫌いになった訳じゃないから。それは、分かってよ。
あぁ、言葉に表さないといけないのだろうか。
今は、今はだけは、貴方の前から姿を消さなければならない理由がある。
だから、私がいないその期間に、他の人を好きになっていたって、私は後悔なんかしない。
だって、私がそう決めた事なのだから。
それを想定した上で、決断した事だから。
清純が、他の人といて、幸せなら、それはそれで良いでしょう?
確かに、隣にいるのは、私じゃないけれど。
笑わせたり、悲しませたり・・・・彼を、そんな表情にさせられるのが、私ではなくなるけれど。
私は、後悔しない。
「、そろそろ時間よ。」
母親に、呼ばれた。
私は、行かなければならない。あの場所に。
清純、これは、私が決めた事。
だから・・・だから、暫くの別れか、永遠の別れか・・・さぁ、どうなるのだろうか。
私にも、貴方にも分からない。