私に触れないで


































































「馨、昨日は誰といたの?」










「ん?と、いたよ。」










「ふーん・・・・・。」


























馨は、嘘を付いている。













昨日は、と一緒じゃなかったのに。













皆、口々に言っていた。













馨が、“違う女と、歩いていた”って。




























「馨さぁ・・・・・を、好きなの?」










「好きだよ?僕は、が大好きだよ。」















幸せそうな、笑顔。













その笑顔を見る度に、馨が彼女をどれだけ好きなのかを実感する。


















幸せなんだ・・・・・。


















良かったと、思う。


















でも、羨ましい。


















馨が、羨ましいんだよ。










































「光、どうしたの?遅刻しちゃうよ?」










「え?あー・・・・もうこんな時間なんだ。」















朝食・・・・・余り食べなかったな。













授業中、お腹が空かないと良いんだけど。





































































「やっぱり、無理だよねぇ・・・・・。」















やっぱり、お腹が空いた。













しかも、一限が終わった辺りから。













次の時間は、体育。













しかも、バスケット。














あんな激しい運動・・・・空腹時にやるもんじゃないよ。






































(お菓子でも、持ってくるべきだったかな・・・・・?)




































ハニー先輩のでも、貰ってしまおうか。













貰っても・・・・・・・否、駄目だよ。













そんな事をしたら、後が怖いから。













ハニー先輩は、怒る・・・・・よね。





































「はぁ・・・・お腹が、空いたよ・・・・。」















誰か、食べる物をくれないだろうか。













馨は・・・・・ハルヒと話し中。













あ、でも・・・・ハルヒなら、何か持っているかも知れない。













僕に、何かくれるかも。























そう思った僕は、立ち上が_________





























































「どうぞ。」


































































_______ろうと、した。













実際、中腰位にはなったと思う。













突然、僕の目の前に、お菓子がやってきた。













ん・・・・・?













違うな・・・・・誰かが、お菓子を差し出してくれたんだ。











クッキーだろうか・・・・・・とても、良い匂い。












これは、もしかして手作り?













誰だろう・・・・・くれたのは・・・。













疑問に思った僕は、目の前のお菓子から、差し出してくれた相手へと、視線を動かす。

















































・・・・・・。」










「どうぞ、食べて下さい。」










「え・・・・でも・・・・・・・。」















良いのだろうか。













僕が、食べてしまっても・・・・・。













何となく、いけないんじゃないかって思う。













でも、その裏では・・・・欲しいという気持ちもある。



























「馨さんには、秘密ですよ。」






























それだけ言って、はお菓子を置いて去ってしまった。













僕は、去っていくと、机に置かれたお菓子と、ハルヒと話しをしている馨を見た。




















































“馨には、秘密。”



















































秘密にしてしまって、良いのだろうか。
















馨に、言った方が・・・・・・否、秘密にしておこう。













秘密で、良いんだ。































「頂きます・・・・・っと。」







































僕と、だけの秘密。


















馨と、だけの秘密。

















馨だけの、秘密。


















そして・・・・・僕だけの秘密。


















馨には、まだ言っていない。


















でも、アレを見たら・・・・・もう無理だ。














































(御免ね。先に、謝っておくよ。)












































言葉に出さないけれど、僕は心の中で謝った。













謝りながらも、僕は彼女がくれた、お菓子を口に入れる。

























「うん・・・・美味しい。」















美味しいけれど、何だか空しさが広がっていく。













椅子に寄り掛かり、教室全体を見渡してみる。














何時もと変わらない。













この雰囲気は、ずっとずっと変わらないでいられるのだろうか・・・・・。