仁王先輩の視線を追うと、あの人と視線が、重なった。
君の、想い。俺達の、想
い。
仁王先輩が、険しい表情になったかと思うと、誰かを睨んでいた。
(どうしたのかしら・・・・。)
不思議に思った私は、先輩の視線をたどってみる。
誰なのだろう・・・。
すると、そこには立海のジャージを着ている人ではなく、他校のジャージを着ている人がいて。
その人も、仁王先輩を睨んでいた。
仲が悪いのだろうか。
仁王先輩が、機嫌を悪くするのを私は、見た事がなかった。
私は、あの人を知らない。
どういう関係なのかも。
そんな事を考えながら、見つめていると、目が合った。
蒼い瞳。
なんて、綺麗なのだろう。
吸い込まれてしまいそうな程、綺麗すぎて。
空の、青の様に、澄んでいて。
とても、強い意志を持っている。
でも、それは、淋しそうな瞳にも感じた。
誰にも、見せない。
弱さ。
誰に、見せているのだろう。
その心を。
本心を。
貴方は、誰ですか?
どうして、そんな瞳をしているの・・・・。
私は、知りたいと感じてはいけないでしょうか?
初めて出会った人。
貴方の名前は、何というのですか?
「。彼奴が・・・・気になるんか?」
仁王先輩の、声で現実に戻った。
ふと、先輩を見ると、とても悲しそうだった。
今にも、泣いてしまいそうな程に。
先輩、どうしたんですか?
私が、そんな表情にさせているのでしょうか?
そうだとしたら、何が原因なのでしょうか。
あの人を、見ていたから?
それでしょうか?
確かに、気になっています。
ですが、まだ何も話していない人。
何も分かっていない。何も知らない。
「・・・・・あの・・・さ。」
「おい。」
仁王先輩が、私に何か言いかけた時。
あの人が、話し掛けてきた。
名前も知らない人。
仁王先輩は、再びその人を睨む。
その瞳は、警戒している様だった。
「そう睨むなよ。仁王。」
「黙れ。何のようじゃ。」
二人の、周りの空気は張り詰めていた。
居づらい・・・・。
この場所から、逃げてしまいたい。
居なくなってしまいたい。
「お前に用じゃねぇよ。勘違いするな。用があるのは、そこの女だ。」
「・・・・・・私・・・ですか?」
「あぁ。お前に用がある。仁王、良いだろ?
どうせ、お前の女じゃないんだ。何処に行っても、関係ないよな?」
勝ち気な表情。
そこには、弱さはなかった。
では、あの時一瞬だったけれど、見えた弱さはなんだったのだろう。
これから、どうなってしまうのだろう。
何だか、嫌な予感が過ぎった。