目の前の光景は、幻であって欲しい。
君の、想い。俺達の、想い。
一体、何なんだろうか。
が、男に抱き締められている?
嘘じゃろ?
あれは・・・・・氷帝学園の制服。
と、いうことは・・・・・跡部か?
「ふざけんな・・・・っ・・!!!!」
俺は、走った。
がいる場所に。
嫌だ。
他の何を奪われても構わない。
けれど、を奪われるのだけは御免だ。
は、俺だけのものにしたいから。
跡部、はやらない。
「おい、を離さんか。」
二人の元に、やっと追い付いた。
早く、離して欲しい。
の手に触れていいのは、俺だけ。
他の奴が触れようとすれば、そいつは敵と見做す。
今まで俺は、そうやって周りの奴等を引き離してきた。
だが跡部は、そうはいかないだろう。
コイツは、手強い。
金もあれば、顔も良い。
悪い場所は、良い場所に覆われてしまい、なかなか見つけられない。
「なんだ、仁王じゃねぇか。邪魔すんじゃねぇよ。」
その余裕な態度・・・・見ていると、苛々してしまう。
どうして、焦らない?
が、自分の側にいるからか?
「悪いが、このまま見過ごすのは御免じゃな。跡部、を離せ。」
「断る。」
跡部は、後ろから彼女を抱き締める。
やめろ。
そんな事を、しないでくれ。
に、触れるな。
触れてもいいのは、俺だけなんだ。
「跡部・・・離せ。俺は、何をするか分からんぜよ。」
「上等じゃねぇか。やれるモンなら、やってみな。」
“の目の前で、出来るんならな。”
跡部の方が、上だと言うのか?
突然現れた男に、ずっと好きだった女を奪われるのか?
そんな事・・・・・許してたまるか。
「離せよ。」
俺は、を奪った。
今、この温もりを離したくはない。
